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テンポラリー通信

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2007年 03月 07日

「白痴」のさっぽろー春のにおい(19)

黒澤明が撮影したドストエフスキーの「白痴」を映画化した作品は札幌が舞台で
ある。昭和26年に原作のロシアのサンクトペテルブルグを札幌に置き換えて制
作されている。私はビデオで見たのだがモノクロームな画面に冬の札幌が躍動
していてその冬の空気感と街並みに深い感慨を覚えた。市街地再開発法などが
まだまかり通る前のいい意味での正統な近代が残っている札幌なのだ。そして
驚く事はそのロケ先のほとんどが都心の中心部で撮影されている事である。
深い太いツララの伸びる屋根の家。それは今の二条市場のあたりなのだ。その
外にも旧札幌駅周辺、北大周辺、中島公園、駅前通りの喫茶店等一戸建ての
商店が立ち並ぶ中で撮影されている。現在面影を残す現場は月寒・八紘学園
の佇まいのみと言ってもいい。ちようど今頃の2月下旬から3月上旬までに撮影
されたというこの札幌の冬の凛とした空気感とゆったりとした街並みは沁み入る
ように美しい。<駅前に降りたときから個性的で魅力ある街でした。それが今は
どこにでもある都市と同じようになってしまって・・>と’89年に来道した黒澤明
が語っていたと和田由美さんが記している。そう、この街のこの雰囲気は少なく
とも’70年代初めまでは保たれていたのだ。それは街が等身大で非等身大へと
大きく変貌をみせたのが’70年代以降だからである。大きい事はいい事だという
他との差別性を優位とする現在の六本木ヒルズの勝ち組負け組に通底する街の
構造がこの頃から札幌でも始まるのである。札幌の原宿とか裏参道とか=で結
ぶ中央模倣の風潮が街の隅々にまで及んでくる。札幌の村的<STATE>が喪
失し区性に取り込まれデジタル化した丁目に統一され<OF>は=に取って代わ
るのだ。二条市場という界隈性、駅前通りという界隈性、円山という界隈性それら
幾つもの地域の個性がかもし出すさっぽろという<UNITEDSTATEOFさっぽろ
>が同じ顔をしたダウンタウンになっていく。黒澤明が映像で残したこの札幌は北
の土地の保つ空気感とともにネガとポジのように現在のサッポロをその対比にお
いて映し出す。それを懐古ととるかはたまたより本質的な問題ととるかは文化の
アクチヴィテイーに関ってくるのだ。軒下も屋根も消失したノッペラボーな建物が
アネハだ、アサヌマだと地震に揺らぐタワーのお化けの様に立ち並ぶ街には人の
界隈性もツララのように蒸発してくる。そして深夜の明るいコンビニを原風景とする
ような他は高い暗闇に吸い込まれている街ができる。

*藤谷康晴展「肉体vsCONCRETE FICTION」-9日まで。
*斎藤周展「3月の次から」-3月13日(火)-25日(日)
 月曜休廊 AM11時ーPM7時於テンポラリースペース
 札幌市北区北16条西5丁目1-8北大斜め通り

by kakiten | 2007-03-07 15:28 | Comments(0)


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