藤谷康晴展最終日。雨降る。屋根の上を雨音が響く。冬を殺す刺客。雪を消す。
藤谷さんの白いインクで画き続けるライブドローイングの今日にはピッタリかもし
れない。北国の二月の雨。厳寒の雪の大地が雨で消去される。雨のテロ。精密
に画かれたマンホール、排水口、アスファルト。白い修正液でどう消され、どう形
をもつのか。「殺風景」と題された道都の繁華街。そのショッピングビル群を目の
高さで切り人の群れを消し、看板も色も消去し足下の路面を擦り出すように顕在
化させそこに肉体vsというタイトルで1日挑む。消しつづける。その結果なにが生
まれるのか。さあ、画家の酒鬼薔薇さん、お手並み拝見です。君は「透明な存在
であり続けるボク」なのか!定刻。藤谷さん来る。”雨とはなあ”と呟く。しばらく息
を整えるように歩き回る。白いインクを筆に浸し描き出す。待ちかねたようにMさん
が来る。しばし注目、そして撮影。雑談しながらも眼は藤谷さんの筆を追う。天井
桟敷の役者だった平川勝洋さんが来る。初めて見て会場を歩き回り二階吹き抜
けに座る。壁に飛んで展示されている一枚が気に入り購入する。色めく日常と題
されたシリーズの一枚「ドーン」という作品だ。その間も描き続けている。形が見え
てくる。花だ。マンホールに花が咲く。意外な展開。蜘蛛の巣状の模様も出てくる
。マンホールに時間と生き物性が絡まる。漂白されたモノが時間を備えてくる。命
が芽生えてくる。そうか、夕張の暖かい廃墟の風景。都市が廃れ壊れその後に命
が復権するように。その暖かさ、ねい猛さそんな渦紋状の植物の蔓のような線が
這い回っている。廃墟の復権。ピカピカの新しい廃墟ではなく命の正当な廃墟。
さっぽろと夕張。産業遺構物が堂々と立ち寂れていた時の夕張。その都市の優
しさ暖かさを思い出していた。さっぽろの表通りには明るい廃墟しかなかった。朽
ちる自然がなかった。藤谷さんはそれを今再現している。彼が凝視した明るい廃
墟の下で。見る見るうちに覆われていく。蔦が茂り命の曲線で覆われる。グレン
グールドのバッハをかける。