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テンポラリー通信

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2007年 01月 22日

吹雪の時間ー函となって溢れる(38)

堀田真作展の為小論を書く。ドイツのハンブルグで3月開かれる個展の為のもの
だ。アルミの板を研磨し線を入れ濃淡を入れギラリと銀屏風のような作品である。
一昨年前のスペースで展示した時このブログに安土桃山時代のようとちらっと書
いた。ハンブルグのキューレーターSさんがそれを読んでいて是非書いて欲しい
という事から先日の訪問ともなった。室町時代二百有余年江戸時代二百有余年
とふたつの将軍の時代に挟まれた僅か五十年程の安土桃山の時代は日本でも
珍しい革命とテロの時代である。旧来の価値観をひっくり返し南蛮渡来の外の世
界の文化を取り入れ茶の湯、浄瑠璃、能楽、歌舞伎が民の側からも発展した時
代でもある。その代表的な人間が織田信長であり千利休だろう。信長は南蛮渡
来の鎧兜に見を固め既成の権力を叩き潰し、利休は椿の花の美しさを演出する
為庭の他の椿すべてを切り落とし一輪だけにしたという。このふたりに象徴される
苛烈な一種のテロ、革命の精神は日本の歴史上そうあることではない。この一瞬
のような短い期間の激しさが堀田さんの作品の基調にも感じるのだ。そして彼の
生まれた帯広、十勝の国の由来にもそれを感じていた。先住民族のアイヌ語で
トカプチーtukapchiは幽霊。往時十勝アイヌ極めて強暴常に侵略を事とす。と
永田地名解は伝えている。この説には異論もあって定説とはなっていないが堀田
さんの作品には十勝の冬の吹雪のような激しさと北独特の冬の乾いた湿暖では
ない冷気があって時に私には日本刀の刀身のように見えるのである。彼自身は
アイヌ人ではないが彼の生まれた土地の風土と歴史上の一瞬の幽霊のような安
土桃山の華麗さとが彼の内部でクロスするように表現世界を創っているように思え
るのだ。湿度感のない白銀の肌と疾風のような線の動き氷柱のような垂直で強靭
な天地の線。安土桃山の歴史を切り開くキラリとした刀の刃のような刀身の光。
彼の内部のふたつのtukapchiが渦巻いているような気がする。それは旧世界を
切り裂くテロリズムのようにも見え志の高貴な精神の銀屏風にも見えるのだ。
そんな事を書いた。北海道的には無名に近い彼が昨年五月豊田市美術館で個
展をし今度はドイツへと出ていく。多分彼の作品はヨーロッパでこそ認められる
だろうという予感がする。私の拙い小論が少しでもお役に立てればと願う。今回
堀田展を企画したSさんも帯広の出身と聞いた。私の十勝への目線は同時に
Sさんへのインターローカルなエールでもあるのかも知れない。ドイツには真っ
白で真っ青な雪と空がないと言っていたSさんに十勝平野の真っ白な吹雪の強暴
さを石狩の国から思っての事だ。

*冬の高臣大介ガラス展「雪とgla_gla」1月23日(火)-2月4日(日)
 AM11時ーPM7時月曜休廊於テンポラリースペース
 札幌市北区北16条西5丁目1-8tel/fax011-737-5503

by kakiten | 2007-01-22 13:00 | Comments(0)


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