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テンポラリー通信

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2007年 01月 10日

四人の哲人ー函となって溢れる(29)

札幌大学の三上勝生さんと元教え子の平岡拓夫さんが来る。三上さんとは二度
目の出会いだ。彼のブログを教えてくれた人がいてその中で吉増剛造さんの詩
「石狩シーツ」に触れた文を読んだ。詩の中の<北石狩衛生センター>を対岸の
観光名所石狩灯台と比較しこの最終ゴミ処理場の建物を現代の灯台とする卓見
を披瀝していて感心したのだ。その後吉増さんと工藤正廣さんとの対談の後三上
さんと初めて会った。その際ブログに書かれた事の感想を述べそれがきっかけで
今日の訪問となった。一緒に来た平岡さんは現在東京でIT産業に身を置き会社を
経営している三十歳の事業家である。野上さんの作品を見ながら四人で話はどん
どん本質的な深いところへと進んだ。コンピユーターとネットの世界を生きている
現役の事業家と手で木を彫り石を彫る彫刻家、哲学を経営学に織りこみ大学で教
えるという三者三様の立場であるにもかかわらず話は人間の身体性の回復と言う
点でそれぞれがそれぞれの核心を問題提起する形で話は重ねられた。私には平
岡さんの生活の現場から想起されるようにぽつりぽつりと語り、さらに時として鋭く
問い掛ける言葉が印象的だった。ギヤラリーで四時間ほど場所を変えてさらに深
夜まで話は尽きなかった。身体そのものを駆使して作品を創る彫刻家とITを駆使
して事業を行っている事業家と大学で哲学を専攻し今は経営学を教えコンピユー
ターに現代の哲学を見ている教授とそれぞれがいかに現代のおける身体性を獲
得するかを熱く語ったのだ。機械文明による人間の手足の機能の増幅は利便性
を著しく高めたがその結果喪失してきた五体五感という本来の身体性をどう捉え
るか、どう回復していくかという事が煎じ詰めれば主題だった。こう書いてしまえば
それなりの事だがそのプロセスは個々の生活上の事も関るので具体的で濃く今
は整理して語る事ができない。只それぞれが個の現場で感受しているリアリテイ
はその根っ子の処でクロスオーバーしながら共通の関心を保って話は尽きないの
だった。最後に平岡さんが尾道の野上さんの仕事場を訪ねることを約束して四人
の哲人の濃い夜は終わった。

*野上裕之展[NU」ー14日(日)まで。
 AM11時-PM7時於テンポラリースペース
 北区北16条西5丁目1-8

by kakiten | 2007-01-10 14:07 | Comments(0)


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