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テンポラリー通信

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2006年 12月 26日

野上裕之展ー函となって溢れる(16)

昨晩から徹夜をして会場で野上さんが作品を作っている。尾道から持参した線木
を束ねて固定し彫刻して立ち上げている。床板の木の質感と一体化して作品が広
がっている。従来の吊った作品、壁の展示と違ってより床と世界が繋がって見える
。その分空間が地から一体化してくる。ここ半年見ていてこの空間がひとつ、いち、
にの、さんにきているのを感じる。場と作家の表現するタイミングがフイットして在
る。野上さんの札幌を発って尾道での古民家プロジェクトそしてメキシコ、途中の
友人の不慮の死等の時間の流れの中で今さっぽろで個展をする事の意味が深く
場と関っているからかもしれない。昨日歩いた命薄い街。そこを支配する金銭の
原則にここも無縁ではないが命は濃いのだ。その命の闘いを野上さんもまた尾道
で闘い、私もここで闘っている。高臣大介さんのガラスの房々、村岸宏昭さんの
白樺、藤谷康晴さんの都市の凝視、吉増剛造さんの石狩河口の咀嚼、酒井博史
さんの「フアイト」絶唱、阿部守さんの素材と水の原風景。いずれもがこの場でゆ
らめき、吊られ、雫となって時間を刻んだ。しかし床から立ち上がる野上さんの作
品はまた一味違った世界を構築しつつある。尾道の古民家で使われていた木材
という素材の性もありここの五十年近い古民家と素材の点でもお互いが呼吸しあ
っている。細めの線木が束ねられて素朴なジャコメッテイのように立っている。まだ
一体だけだがこの後増えて三体がたつと言う。正確なコメントは全部出来上がって
から書いていく。命薄い街の影響で心萎えがちな日々に私の呼吸もいち、に~の
さんと頑張る。年を超えさっぽろの熱い虹がここから架かっていくだろう。そう思い
作品を見詰める時間が始っている。

*野上裕之展「NU」-1月14日まで。AM11時-PM7時(月曜定休)
 於テンポラリースペースー札幌市北区北16条西5丁目1-8

by kakiten | 2006-12-26 12:20 | Comments(0)


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