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テンポラリー通信

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2006年 11月 16日

一年ぶりの「玄冬」ー冬のいのり(21)

初冬の淡い陽射しが暖かい。まだ葉を落としていない樹が俯いて日向ぼっこしてい
る。いつか読んだあるSFを思い出していた。地球は統一されて地球大統領が宇宙
から来た異星人を見送っている。地球の各地を廻りもう遠い星に帰るのだ。大統領
が聞く。<地球はいかがでしたか?>宇宙人が答える。<みんな歓迎してくれ素晴
らしかった。でも一番心に残ったのはあの緑の頭をした寡黙な人達です。よろしくお
伝え下さい。>その緑の頭をした人たちにももうすぐ白い幹の季節が来る。このブ
ログを書き出してもうすぐ一年になる。今頃裁判に負け唯一の窓口としてブログを
開いたのだ。青春、朱夏、白秋、玄冬を光の色として書いた記憶がある。雪が無く
樹が黒々としていた冬だった。そして今及川恒平さんの歌から「夏のひかり。秋の
はなし。冬のいのり」をサブタイトルに使っている。五月に此処に移転してから親し
いふたりの死に遭遇した。その死者の為にこの小タイトルを選んだ。最初の「春の
におい」までまだ先は長い。風が出てきた。午後は寒さが増すだろう。束の間の小
春日和。冬の祈りはこれからだ。そして緑の頭をなくし命の赤をその底に秘めてい
る黒の季節<玄冬>を迎えるのだ。<玄>という黒は木汁を絞って染めた色を云
うという。赤や紫やいろいろの色を重ねて染める。「玄は糸を黒く染めて色の底に赤
色がまだ残って見える」状態をいうと記されていた。天の色も指す。やはり樹と光な
んだなあ。
尾道にいるN君から電話が来た。さっぽろには今帰りたくないと言う。ここでしばら
く仕事を続けけじめをつけたいと言う。今続けている場所が銀行の差し押さえにあ
いしかし協力者支援者が現れなんとか継続に向けて頑張っているらしい。古い民
家を何年もかけて構築していくアートのプロジェクト。その間メキシコにも行き外界
という世界と多くの接触そしてその深まりから彼は何かを今掴みかけている。そり
ゃあ、さっぽろに今いるよりいいよと伝えた。自分の土壌は自分で耕(たがや)す。
カルチヴェートなしのカルチヤーさっぽろに巻き込まれない方が良いに決まって
いる。落ち着いたらまた会おうと話は終わった。これでまたひとつ優れた個展が延
びた。残念で淋しいさっぽろである。ミットを構えてダイアモンドにひとり。でも決して
ネット裏で解説はしない。あくまでグラウンドでピッチャーを待つ。たったひとりで球
を受ける。そして投げ返す。キヤッチャーという立会い人。そして陰の投手でもある
事を自覚している。N君にはそうした球を投げ返したのさ。

by kakiten | 2006-11-16 13:20 | Comments(0)


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