現代美術で環境アートをテーマにしている小川智彦さんの展示をする。
小川さんは2~3年ほど前フインランドに1年間留学し現在はモエレ沼の
イサムノグチ公園に勤めている若手30歳台のアーチストである。テンポラリー
スペースでも3度ほど展覧会をしている。彼と詩人の長万部在住の薩川益明さ
んとは一年間私も含め3人で札幌を様々な角度からよく歩いた。琴似街道、
ばらと街道旧石狩川を辿り江別から石狩河口まであるいは琴似川の源流か
ら盤渓等年齢20歳位づつ違う3人が珍道中よろしくそれぞれの目線でさっぽ
ろという環境を歩き廻ったのである。この経験は後に「原稿用紙 ほっつき歩く」
というタイトルの2人展となって2004年2月に結実する。薩川益明さんは詩とし
て作品化し、小川智彦さんはその詩を素材に2冊の目にみえる本と、透明なオブ
ジェとに形象化した。この時70代の薩川さんの見てきた札幌と、30代の小川さん
の見てきた札幌とがともに歩く時間を共有することで<いまみているさっぽろ>とし
て共同作業の結晶が展覧会となったのである。札幌生まれの薩川さんにとって、
現在は長万部からのタイムスリップでもあり、旭川生れで現在札幌在住の小川さ
んには、古い街道や、川を通じてみる札幌は新しい目線であり、2人は共に札幌を
媒介に<現在>を表現したのだと思う。今回の小川さんの作品は、3つの窓のよ
うに雄冬の荒波と水平線が切り取られ会場が船室のなかであるかのような気持ち
にさせられる臨場感溢れる作品である。風景と風土其処に生きている固有の時間
を感受させる優れた構成と思われる。