毎年今頃個展の後内海さんは旅に出る。昨年はパプアニユーギニア。今年は
ボーウボウ島へ行くという。「ボーウボウ島って何処?」と聞くと「フイリッピンの・
・・」と答えた。名前からしてなにか内海さんらしいところという気がした。パリとか
ロンドンとかでないところがいい。辺境というよりも縁(へり)という感じなのだ。そ
のエッジの処に身を置いて普段の自分を見詰めなおす、日常のふわふわした
海綿状の自分をへりから見詰め直す、そんな締め直す時間をきっと大事に考え
ているのだろうと思う。自分の立ち位置をじっと確かめる(fix)そして結合する(mix
)さらに自分自身の世界をひろげる(max)なのだ。どこやらの集団アートデモンス
トレーシヨンみたいだがそんな事を内海さんは当り前だが一人で試みている。
街へとか世界へとかいうキヤッチコピーはない。個の中で自分自身の為にそう
するのだ。内海さんのように異国という主題を日常に対峙するテーマとして作品
に取り入れる人にとっては一年の最後に行くエッジの旅はとても大切な行為なの
だと思う。異国ではなくとも自分の生きていく日常のなかでエッジを経験する事は
ある種のメリハリとして日常に流されない為にも必要な行為と思う。それは頭の問
題ではなく身体の問題に置き換えても同じだ。身体のへり、外と触れる所が活き
活きしないで命の新鮮さもないのである。観光会社のセットされたツアー旅行は嫌
だと内海さんが言う。一度どうしてもそれでないと旅費が高くて行けない場所があっ
てツアーに入ったがある面至れり尽せりで帰国した後頭にはなんにも残っていなか
ったと言う。全部説明され案内されそれで納得してしまって帰って一人になったら
体がなんにも覚えていなかったと言うのだ。設えられた<サイトシーイング>な
のだ。まあそれはそれで満足する人もいる訳でいいのだが作家が精神のエッジ
として個の旅を欲求する場合は不満足になるのは当然と思う。パックされた様々
な仕掛けが世に横行していて街も食事も交通も芸術文化すらそうである。そして
その構造が充実すればするほど世界のへり、界(さかい)は明視の翳に紛れ私た
ちにとっての異国は密かに充実しているのかも知れない。
*内海真治展「ブループラネット」-陶板画・ガラス画・オブジェ
31日〈火)まで。AM11時ーPM7時
札幌市北区北16条西5丁目1-8。tel・fax011-737-5503
E・mail-temporary@marble・ocn・ne・jp
*ボーウボウ島ではなくボフオール島の間違いでした。