高臣大介展2日目。昨日とは打って変わって静かな一日となる。
相変わらず雪。夕方太田ヒロさん来る。自然と一杯入り昨日の話になる。
彼は打楽奏者である。只打楽といっても通常のパーカッシヨン奏者ではない。
かってはドラムを叩いていたらしいが、モトクロスの趣味もあってある日両足に
事故で大怪我をしドラムを叩けなくなりそれから既成の楽器を使わずに自分で
楽器を作るようになったという。その素材は、捨てられた金属の板や汽車のレー
ル廃屋の柱等多岐に渡る。その素材を金属なら一度川や海や山の中に埋めて
錆びらし、時期をみて掘り出し、削り、磨き楽器に仕上げるのだ。それ自体が
美しく一度お願いして個展をした事があった。また彼には若い美術の作家のフアン
も多く彼らの個展でよく演奏を頼まれていた。その時持参する楽器が、作品に
合わせていてそれ自体が彼の作品批評にもなっていた。あちこちの楽器保管場
所へその度に掘り起こしにいってそれが石狩川だったり、張碓だったり、裏山
だった。まるでリスのようなひとだな~と思う。餌を仕舞い込んでいるみたいだ。
オープニングでは完全にノリノリで2回も演奏して、その後夢遊病者のように
フラフラみんなの間を歩いていたがその内二階で寝てしまった。そして明け方
眼を覚ました時の話。「大介、誰かいたの。白い服着てズボンをはいた人が。
なんか悪いと思って声かけなかったけどさ。」「そんな人いないっすよ。やだな」
「え?だって少し俯き加減で真ん中の椅子に座っていたよ。長めの髪の若い娘」
「いないすよ。俺は酔つぱらって寝てましたから、いやだな~。でも本当?」
「本当だよ、はっきり覚えているんだ。てっきり大介おまえが、さあ」「そりやあ
ないっす!」
幻覚か酔っ払いの願望か分かりません。本当かも知れません。でも大介さんの
新婚の名誉の為に云っておきますがそれはありません。ただ私には思い当たる
のだ。彼女が白い服を着ていた事でそう思うのだ。一緒にここの時間を過ごして
きた25年前に植えた白樺の精霊のように。だってズボンをはいているのもそうだ。
ぼくらいつも見ているのは、枝、梢ではなく彼女の足元ー幹ですからね。
初日の熱い透明な空気が彼女を、リスのようなヒロさんに誘われてふっと姿を見せ
たくなったのでしよう。だってそれはヒロさんだけが見た話ですから。