昨日資料や本等沢山の荷物を預かってくれた賀村順治さんご夫妻が来た。阿部守
展を見に来てくれたのだ。その折石狩の中川潤さんの大怪我の事を聞いた。先日
阿部さん達と増毛方面へ出掛けた時寄ったのだがなにか元気がなく望来の定食
屋さんでも畳に座らず椅子に腰掛けて痛そうだったのが思い起こされた。その時
は以前の古傷かなと思っていたのだが我々が訪れた1,2日前に鉄版を足に落と
し20cm程の中が見えるくらいの怪我をしていたのだ。消毒液を希釈しないでかけ
て火傷もしたようで歩くのも辛そうだったと言う。その話しを聞いてすぐ電話した。
「もう肉ももりあがってきたから大丈夫だ」と言う。病院にも行かずまあ、と思った。
我々が行った時微塵もその事は言わなかったし、普段よりさらに寡黙ではあった
がお茶も出してくれた。電動鋸で四十針もの傷を手に負ったり今度の事といい注
意力が少し弱っているのかと思う。ここのスペースもそうだが彼とは’80年代後半
からいつも一緒に仕事をしてきた。岡部昌生氏のデザイン力、中川さんの写真の
記録と様々なサポート。多くの作家たちはさっぽろで深い印象を彼に持っているの
だ。北海道の登山家として五本の指に入る人だが近年はアイヌ学の実践者として
自耕自食の道に入りあえて登山家としての名誉の道を歩まない人である。その生
き方が人柄と共にいかに芸術家の心を捉えていたかは大野一雄さん、吉増剛造さ
ん、戸谷成雄さんはじめ多くの人がさっぽろを語る時必ず出てくる程なのだ。名も
なく貧しく美しくという生き方を真に実践していると言ってもオーバーではない。さっ
ぽろを本当に生きている人である。テンポラリースペースの基礎は中川さんの協力
抜きにはない。今回の大怪我の話しを聞いて克己心の強い寡黙な彼の前でふっと
自分の無力のような現在を思う。黙々と人に尽くし自分の事は決して人に語らずま
るで中川さん、宮沢賢治じゃあないですか。ここの大家さんの奥さんが中川さんの
目を”イルカみたいな優しい目”と言っていたが、参ったなあ、せめてここに記して彼
を知る人たちに伝えたいと思う。九州から作品の搬出の事で電話が来た阿部守さ
んにもこの事は伝えておいた。自分の怪我は伏せてジャスミンテイー(!)を振舞
ってくれた彼の克己心に阿部さんも驚いていた。怪我そのものよりもそうした生き
方を選んでいる精神の在り様にある真摯なものを感受するのだ。群れに媚びない
個の在り方としてである。傷だけが深いのではない。早く怪我直して一緒に歩こう
ぜ。また、深いさっぽろをさ。
*阿部守展ー30日までam11時-pm7時
*酒井博史ライブ「Mの記憶」10月4日(水)pm7時~1000円
*及川恒平ライブ「夏のひかり、秋のはなし」10月8日(日)pm4時~3000円