休廊日の昨日は酒井さんの車で石狩河口を経て増毛へと向かった。途中河口の
岸辺に立ち寄り、ハマナスの砂丘に入った。密生するハマナスの群落は小雨模
様の天気で実が赤く濡れていた。ズボンが濡れるのも構わず少し歩いた。阿部
さんと阿部さんの教え子で九州から個展を見に来た安部はるかさんが声を上げ
ている。石狩河口の茫漠とした水の風景とハマナスの赤い実の生る砂丘の光景
は今回の鉄とさっぽろの水をテーマにした展覧会の〆に案内したかった所だ。朽
ちた船着場の杭や鉄骨。そして陸の淡水の水が母なる水海と触れているところ。
アイヌ語でマゥという風や呼気をも意味するハマナスの実が実っている。砂丘を
歩くとその意味が実感される。風の実なのだ。それから少し先の中川潤さんの家に
寄る。朽ちかけた漁師の家とおぼしき廃屋をもう何年も前からこつこつと手直しして
住むようになった。内部は沢山の道具類が部屋を埋めている。ひとつひとつが彼
の生活の細部を現していて見飽きない。しばし沈黙が支配する。ジャスミンテイー
を出してくれ一息つくまで誰もが無口だった。登山家からアイヌ研究の実践者とし
て生きてきた中川さんのここは拠点であり城なのだ。三十分も過ぎた頃望来の定
食屋さんに向かいそこでお昼を食べる。モエレ沼のイサムノグチ公園に向かう安部
はるかさんを同じく札幌に行く中川さんに任せ阿部守さんと私写真家の川原亮さん
の3人は酒井さんの運転で増毛へと向かった。幾つもの長いトンネルをくぐり増毛
に着いた。途中送毛の旧道に入り鹿や狐を見る。本来海の道しか無かったルート
で物流としての必要性は分るがやはり自然な道ではないのだ。着いた増毛も暑寒
別岳の麓で石狩とは別の天地である。かって内陸の雨竜町の方から縦走して増毛
には出た事があった。その記憶が強い性もあり海岸沿いのトンネルの陸路は違和
感があった。それから酒井さんのお母さんの故郷という留萌に向かった。ここは酒
井さんには馴染みの場所だけに細かく説明しながら各所を案内してくれる。私はも
う少し疲れ気味で半分上の空で眠気に襲われている。ただ留萌もまた港町でかっ
ては漁業と石炭の積出港として栄えたであろう事は随所に窺えるのだった。やはり
ここも水の道ー港だった。近代土木工法の直線化されたトンネル道路を通りこの
地域に辿り着いても観光以外の実感が湧かなかった。かって北前船が通った昆布
ロード、鰊ロードそれは海上の道である。海からの目線で見たかった。日帰りの陸
路はトンネルと車の道で往復に精一杯だった。移動と場の深まる旅とは違う。私の
個人的な感想、阿部さんはどうだったのだろう?