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テンポラリー通信

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2020年 10月 08日

<編む>という事ー木は水を運んでいる(9)

本を編む事、一冊の書物を創る事。
それは流れ去る川の、緩やかな深い淵ー函にも似ている。
30余年前の札幌の記憶、珠玉のような青春の風景4年間。
中村恵一さんの「美術・北の国から」の一冊。
1960年代から今日に至る自らの造形制作への愛おしさ
に溢れた、山里稔さんの「山里稔の制作思考」の一冊。
それぞれが自己の人生の原点・軌跡を編み装丁した、冬の
秋の、美しい裸木のような、見事に立つ一冊の書物である。
そして送られてきた最後の三冊目は、684頁に及ぶ大冊
「高見順賞 50年の記録」だ。
現代詩の登竜門高見順賞の全記録集である。
この本は今年で終了した高見順賞の歴代の受賞者、受賞作
高見順の記憶、高見順賞設定の記録等を纏め編んだ大冊である。
2020年10月1日発行の400部限定の一冊を編集を担当
した吉原洋一さんが贈ってくれたのだ。
彼は編集という黒子に徹し、戦後現代詩の大きな発信地の記憶
と記録に携わった。
添えられた手紙に<・・・ただただ幸運だったと同時に、ぼく
自身これからの歩みへの責任も強く感じております。>
と謙虚に語っている。
三木卓「わがキデイランド」、吉増剛造「黄金詩篇」第一回受賞
作に始まる現代詩50年の系譜は、私たちの近代そのもののひとつ
の凝縮と思う。
一冊の記憶・歴史、そして高見順の生きた時代へと賞という形で
繋いでいった作品群。
詩集・書物という人間が創造した美しい函。
そこに自らを満たし溢れて、時代という大きな流れを行為してゆく。
偶然ほぼ同時に届いた三冊の私家本に共通していたのは、本を編む
真摯な裸木の幹・枝のような美しさだった。
三人それぞれが本を編むという編集・造本・装丁の真摯さを、心の
裸木にも似た立ち姿で両掌に受け止めさせて戴き、感謝である。

*「追伸・ムラギシ」ー今週土・日10月11日まで。
*「花人・花や」展ー15,16,17日。
*紺屋 纏祝堂個展「上空ノ水面(みなも)」ー10月27日ー11月1日

 テンポラリ―スペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向き
 tel/fax011-011-737-5503
 





by kakiten | 2020-10-08 16:46 | Comments(0)


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