映像作家の石田尚志さんからメールが来ていた。<この春カナダに招聘してくれ
たスタジオの主催者が丁度今回の事故と同じ頃にカナダの川で溺れ、亡くなって
しまいました。(中略)カナダの映像作家達は今、本当に動揺しています。実は彼
が呼んでくれたことによつて、昨年の中森さんの個展で並べさせていただいた3
枚の「巻き物」がフイルム同士によって合成することが出来、やっと完成した矢先
でした。この秋、トロント国際映画祭に選出されワールドピレミアが決まった直後
でした。何かこの作品は、村岸君のギターで踊れた札幌の秋と、トロントの春を
大きく結ぶような追悼の作品になってしまいました。>
もうひとつiさんからメールが届く。<中森さんも夢と執念の美しいゾンビとして
よみがえり続けて下さい。>
私はバンビのようにしなやかに(誰が!)と思っていなかったがとうとうゾンビにな
ってしまつた。それにしてもトロントの春と札幌の秋を結ぶ追悼の石田作品是非
明年上映を実現したい。その折どこかで村岸さんの遺作のCDを流そうかしら。
そう想い、そう感じ、そうしたいと思う事がゾンビの復活のエネルギーです。淵の
ように溜まり溢れていく函のような場こそが身体であり心のボデイであり生きる証
なのだ。呼気と吸気の間にこそ力がある。札幌とトロントで起きたふたつの悲しい
事故が秋と春の季節を結び超え、太平洋の海を越える。人が人を想うことで、生と
死を超え溢れ繋がっていく。そんな時間を私は私の函で万華鏡のように目撃し立ち
会いたいと思う。だからここに立ち、歩き続ける。そんな力を頂いた気がするなあ。
村岸さんの白樺に込めた<志>もまたそこに生き続けるだろう。石田さんのメール
は次のように終わっていた。
<ー僕は来年春、横浜美術館と、横須賀美術館というところでそれぞれ新作を展
示することが決まりました。そこでの新しい仕事をしっかり抱えて、それぞれの港
から出航して、また伺えればと願っています。>
石田尚志さん、また会おうぜ!待ってます。
*'80年代の軸心佐佐木方斎展近作「格子群」を中心にー27日(日)まで。