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テンポラリー通信

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2020年 09月 20日

”追伸”の終わりにー木は水を運んでいる(5)

ムラギシの遺した一点の油彩画。
四国・高知の鏡川で水死した一年後の2007年8月、追悼展
村岸宏昭の記録展が催された。
その時高校時代のムラギシの親友原隆太君が訪ねてきて
今回の展示のきっかけとなった油彩を置いていった。
追悼展では村岸宏昭のインスタレーションの再現や遺された
楽譜の展示が主体だったので、この遺された2002年制作
と思われる油彩画はそのまま私のギャラリーの収蔵庫に眠って
いたのだった。
現在世界を駆け巡るコロナ禍の渦の中で、ふっとムラギシの
膝を抱えうずくまる油彩画の存在を想起していた。
死して15回目の夏を迎え、この遺された油彩画を軸に”追悼”
ではなく、”追伸”として同じ収蔵庫に眠る作品たちと一緒に
ムラギシの原点を再構成してみたいと思った。
上半身は描かれず、下半身のみが宙に浮いているような両脚。
そしてその両脚を抱え支えるように描かれた細く骨の露出して
いるような両手の指先。
四本足から二本足に進化した人間の立つという行為の原点、両脚
という縦軸が弱弱しく立つ場すらあやふやな足元である。
そしてその両脚を抱いている肉の薄い、骨だけのような両手・指。

グローバル化という物流の世界軸に乗って広がったコロナウイールス。
一地域の枠から物流の増幅し巨大化する横軸回路が人を介して世界中に
物を運ぶ現代社会構造。
そう考えた時ムラギシの、うずくまる縦軸の絵画構造は私に佐々木方斎
の20代の代表作「格子群」を呼び寄せ、昨年沖縄のアトリエから
初めて世に出た豊平ヨシオの「亀裂」作品を呼び寄せたのだった。
「格子群」の縦軸に3本の横軸が交叉する純粋抽象作品。
一方「亀裂」の作品は沖縄の空・海を象徴するようなブルーの地に、
縦一直の亀裂が入る作品群だ。
この二作品をそれぞれの風土・時代と捉え、抱き合わせて構成した。
さらに横軸の現代社会を、鏡面ステンレスを使い、映り込むすべてを
横に揺れ、歪ませる一原有徳の3点セットの作品を斜め前に置き際立
たせた。
10代のエモーショナルなムラギシの傷だらけの両脚の縦軸。
数学の純粋定理のような、北大数学畑出身の佐々木方斎の格子群の縦軸。
沖縄の基地と観光に攫われた現実を、亀裂と空と海の青だけでアトリエ
を埋め尽くすように20年以上制作し続けていた沖縄・豊平ヨシオの亀裂
の縦軸。
この世代も出身地も違う作品たちが、時代の縦軸喪失という同時代の裡に
響き合い木魂し、コン・テンポラリーな世界を奏出していた。

死後一年後親友原隆太君の手で運ばれてきた一枚の油彩画。
その<追伸>への応えをやっと少し果たせた気がする。

*「追伸・15回目の夏ームラギシ」展は9月27日〈日)まで延長
 致します。但し月曜定休・水・金は休廊と致します。
 am12時ーpm7時ー火・木・土・日。
*若林和美展「上空ノ水面(みなも)」ー10月27日ー11月1日

 テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向き
 tel/fax011ー737-5503
*temporaryーphoto https//temphoto.exblog.jpー会場写真見れます。






by kakiten | 2020-09-20 15:03 | Comments(2)
Commented by 中村 惠一 at 2020-09-24 09:40 x
20日に電話いただきましたが、実家にいて携帯充電中ででることができませんでした。現況の厳しさ故、中森さんには十分に気をつけていただき、引き続きご自愛ください。私も家族も今のところ元気です!
Commented by kakiten at 2020-09-24 13:59
素敵なご本、ありがとう・・・。今日お葉書送りました。電話は本のお礼声で伝えたかったのです・・。


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