若い友人村岸宏明が2006年高知の鏡川で溺死して15年になる。
来月8月に命日が来る。
1897年から続いた老舗の家業を閉じた年、その半年後に現在地
にギャラリーだけを残して新たな場を創った。
心通じる友人たちの多大な協力で、荒れた古民家を再生した。
狭い展示スペースは、天井を抜き縦に拡がる縦軸の空間とし、
土壁は板を張り白い壁とした。
古いがしっかりした梁木・棟木はそのまま残し、押し入れなど
の空間に床板を張り2階余剰部分は回廊とした。
展示場から2階に登る為吹き抜けを繋ぐ梯子を設け、奥の階段
と併せて昇り降り可能にした。
その為作品を見る人は、自らの視座を身体の移動と共に作品を観
る角度を獲得し、新鮮な身体を通した経験を得る効果が生まれた。
こうした空間構成を一番最初に評価し喜んでくれたのが村岸君
だった。
そして自ら初の個展を開廊の2ヵ月後に開いたのだ。
この展示の想い出は死後かりん舎より出版された追悼遺稿集に
心籠めて私は書いた。
他にも彼の多くの友人、先輩、恩師たちが心深い文章を寄せている。
作曲・演奏のみならず、絵画、インスタレーション、文章を含め、
表現者として全身で生きようとした村岸宏明を、私は私なりの構成
で追悼の展示を企画してみようか、と思っている。
コロナ、九州豪雨と心重い年に、社会と向き合い、自然と向き
合ったムラギシの純粋な魂を、テンポラリ―スペースの収蔵品で
構成してみたい。
ムラギシの僅か23年の純粋な人生の精髄には、コロナ以降顕在化
した自然と人間、国家社会と人間の、現代が孕む多くの相克が凝縮
して息づいている気がするからだ。
*<ムラギシ追伸ー15年目・夏>ー8月11日ー30日
テンポラリ―スペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向き
tel/fax011-737-5503