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テンポラリー通信

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2020年 07月 14日

15年目のムラギシー荒地(30)

若い友人村岸宏明が2006年高知の鏡川で溺死して15年になる。
来月8月に命日が来る。
1897年から続いた老舗の家業を閉じた年、その半年後に現在地
にギャラリーだけを残して新たな場を創った。
心通じる友人たちの多大な協力で、荒れた古民家を再生した。
狭い展示スペースは、天井を抜き縦に拡がる縦軸の空間とし、
土壁は板を張り白い壁とした。
古いがしっかりした梁木・棟木はそのまま残し、押し入れなど
の空間に床板を張り2階余剰部分は回廊とした。
展示場から2階に登る為吹き抜けを繋ぐ梯子を設け、奥の階段
と併せて昇り降り可能にした。
その為作品を見る人は、自らの視座を身体の移動と共に作品を観
る角度を獲得し、新鮮な身体を通した経験を得る効果が生まれた。
こうした空間構成を一番最初に評価し喜んでくれたのが村岸君
だった。
そして自ら初の個展を開廊の2ヵ月後に開いたのだ。
この展示の想い出は死後かりん舎より出版された追悼遺稿集に
心籠めて私は書いた。
他にも彼の多くの友人、先輩、恩師たちが心深い文章を寄せている。

作曲・演奏のみならず、絵画、インスタレーション、文章を含め、
表現者として全身で生きようとした村岸宏明を、私は私なりの構成
で追悼の展示を企画してみようか、と思っている。
コロナ、九州豪雨と心重い年に、社会と向き合い、自然と向き
合ったムラギシの純粋な魂を、テンポラリ―スペースの収蔵品で
構成してみたい。
ムラギシの僅か23年の純粋な人生の精髄には、コロナ以降顕在化
した自然と人間、国家社会と人間の、現代が孕む多くの相克が凝縮
して息づいている気がするからだ。

*<ムラギシ追伸ー15年目・夏>ー8月11日ー30日

テンポラリ―スペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向き
tel/fax011-737-5503



by kakiten | 2020-07-14 15:10 | Comments(0)


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