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テンポラリー通信

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2006年 08月 20日

記帳する日々ー夏のひかり(1)

美術館の久米淳之さんが来る。佐佐木方斎展じっくりと見ていく。「美術ノート」に
関心を寄せる。美術館にも全巻は揃っていないと言う。'80年代論で話し込んで
いるうち野上裕之さんと岡和田直人さんが来る。尾道に今日車で帰ると言う。隣の
テーラー岩澤さんでお借りした喪服を返しに来たのだ。そういえばお通夜の日ぞろ
っとカラスみたいに喪服が集団で来た時一瞬誰が誰だか分らなかった。今日はい
つものタンクトップ姿だ。彼らの背広姿は村岸さんの死が社会的な存在としてあっ
た事でもある。お通夜、告別式と葬儀場に人が溢れたと聞く。ここでも毎日記帳が
続く。久米さんと野上さんたちが美術の情報を交換して帰った後土田彩織さんが
お母さんと一緒に来た。風の谷のナウシカの「フカイ」のイメージを記してくれた人
である。瑠辺蘂の実家から今日着いたと言う。親子ふたりゆっくりと村岸さんの話
をしていく。個展の会期中彼が好んだ石塚俊明の「風の闇」と及川恒平の「緑の
蝉」を聴かせてあげた。名残惜しそうにしておふたりが帰った後加藤玖仁子さん
が来る。メールでも今日伺いたいと連絡がきていたのだ。ここのオープンのお祝い
と佐佐木方斎展を見る為だった。優れた美術批評家として敬愛する方である。佐佐
木さんの「美術ノート」にまず注目する。これを全巻まとめて見るのは初めてと言う。
こうした仕事をもっと今こそ評価し現在に繋げるべきだと意見が一致する。国際的
に活躍している人なのでギヤラリーの在り方も世界の第一線で精通していてその
話に感心もし状況の差も感じる。美術の業界にきちっと組み込まれた構造がある
世界なのだ。<箱でなく函だ>とか<立ち会うのだ>というようなギヤラリストは
あまりいないと言われた。さっぽろのしかも片隅で肩肘張ってマンガだね、と思わ
ないでもない。しかし加藤さんは世界の状況は状況として私がしている事、してき
た事については本当に評価し応援してくれている。その上で自分自身がひとりで
企画し著書に著しアバカノビッチを初めクリスト、ダニーキヤラバン等の世界的作
家を紹介し交流し信頼された実績からの世界の現況の話なのだ。佐佐木方斎さん
のことも以前から認めていて今回はここの再オープンも含めて二重に嬉しかった
ようだった。2時間ほど個人的なご苦労や家族の事も交えて話された。村岸さんの
個展も見て欲しかった。そして彼のバッハの演奏もきっと加藤さんは評価しただろ
う。今そう思う。孤立無援で自己の価値軸を貫いて生きてきた女性の静かな熱さを
保つた人である。佐佐木方斎展を企画して同時にその頃に生まれた人たちもここ
に集ってくる。偶然といえば偶然だが本当はいい仕事に同世代という軸は無い。
村岸さんの身体的死が社会的死になりいつか時代の死としてその志が結晶すれ
ばそれは、もうひとつの今回の展覧会に記された同時代という名の記帳となるだろ
う。

*佐佐木方斎展'80年代の軸心近作「格子群」を中心に
 8月15日(火)ー27日(日)am11時-PM7時(日曜休廊)

by kakiten | 2006-08-20 13:01 | Comments(0)


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