樹の葉が落ちてきた。
緑陰が消え次第に幹と枝・梢が露わになる。
雪虫が予兆のように舞っていた。
やがて雪が降り、吹雪の朝樹は半身白い翳を纏って、
生命の裸身をすくっと顕すだろう。
山へ行きたいなあ、久しぶりに渇きのように想った。
道無き急な斜面も両手で小枝・草を掴み獣のように登った。
こういう斜面は両手・両足登りの方が楽だった。
そして五体五感が解放される。
山での快感のひとつだった。
山は高さだけではない。
途中の登路が豊かであれば低い山も素晴らしい。
街の道も同じだ。
広い直線道路、高層ビルより、裏通り、仲通り、坂道、
行き止まり・・・そして並木道。
もう自転車にも乗らなくなって、風と光を身に感じエルムの
森を疾走る事もなくなった。
地下鉄や地下通路、電車や車の比率が増え、移動が主となり
身の幹の枝・葉が枯れてゆく気がする。
最速・最新の移動インフラで都市構造は鎧われているから、
裸身の五体五感から遠のいて生きている。
遅くても、高くなくても良い。
好きな山を這うように登ってみたい。
私の中の、心の裸樹が呟いている・・。
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