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テンポラリー通信

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2019年 05月 14日

坑口と河口ー小さなランド(Ⅳ)

東北石巻市、北上川河口で詩人の家を造り作品を公開し
創り続ける、という話を吉増剛造さんから連絡があった。
正式な企画書は後日という事だった。
私はこの時どこかで脳裏に引っ掛かるものがあった。
テンポラリ―スペース奥の階段を上る時、壁に貼られている
ポスターを見て、ハタっと気付いた。
吉増さんの「石狩シーツ」朗読CD発売時のポスターだ。
そこに多重露光の吉増さんの写真が載っている。
北上坑と読める。
何故、夕張の坑道口が北上坑なのだ・・・。
私は咄嗟に沼田氏と上木氏の名を思い浮かべ電話した。
上木氏と繋がり、その話をすると、1989年にその由来を役所で
木板に彫ったのは自分だ、と言う。
そして夕張美術館閉館夕張市役所退職後、それは今時分の家に
有ると言う。
吉増剛造の名作詩「石狩シーツ」の核を成す石狩河口から夕張
川源流域探訪時の発見が、この北上坑入口に掲示されていた文中
の<女抗夫>の記載なのだ。
3・11の震災後の爪痕、今だ生々しく残る東北石巻・北上川
河口。
そこに滞在し、詩作を立ち上げる吉増剛造の真摯な試み。
それは2011年冬「石狩河口/坐る ふたたび」から始まった
吉本隆明をコアとする一連の「怪物君」「火ノ刺繍」と続く戦後
近代への切込み。
そこに3・11以降のもうひとつの河口が立ち顕れている。
しかし同時にそのふたつの河口は、あたかも日本の明治開国以降
大正、昭和前期を経てノーモア、ヒロシマ・ナガサキで破綻した
近代と、現在に繋がる戦後米国占領下の近代とが、根底に於いて
本質的共有性を保っている真実を、夕張北上抗の命名は告げている
ような気がする。
石炭・水力エネルギーと共に開かれた近代。
石油・原子力エネルギーと共に増殖する現代。
その近代と現代のふたつの河口が、北上川河口と石狩河口を遡上した
夕張の坑口に立ち顕れていたのではないか・・・。

上木氏が近々現物もって訪ねて来ると言う。
これがまた役立つなんて、とその声はとても嬉しそうだった。

 テンポラリ―スペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向き
 tel/fax011-737-5503


by kakiten | 2019-05-14 17:25 | Comments(0)


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