午後3時頃西からの陽射しが注ぎだす。
この日も暖かで晴れた日。
外に吊ってあるガラスに夜溜まった水が膨張して、縦に
見事にふたつに割れて落ちていた。
これは何かに使える、と大介さんが保管する。
溜まった水が凍り膨張して、スパッと削ぎ落したように
ふたつに分かれた姿は確かに見事である。
人為的な行為では在り得ない。
凍るという氷柱とガラスの試みは暖気で叶わなかったが、
この日最高の自然からの贈り物の時間が、この後始まる。
西からの陽射しが光の雫となって、小一時間廊内のガラス
の房に溜まり煌めいて、一瞬たりとも止まる事はなかった。
2階吹き抜け回廊から椅子に座ってじっと見守る数人の人。
階下の数人と併せて声もなくただ見守っている。
ストーブの暖気が廊内に空気の流れを生んでいるのか、吊っ
てある「野傍の泉池」のガラス房が揺れて触れ合い、微かな
澄んだ音を響かしている。
光の変化・煌めきと澄んだガラスの響き。
人はみな、陽光が西に傾き廊内に光の照射が去るまで無言で
一時間余り魅入っていた。
最終日の今日、氷柱とガラスの競演は叶わなかったが、最高の
陽光とガラスの光の競演に恵まれたのだった。
光の吹きガラス・・・。
氷結という水の吹きガラスは叶わなかったこの一週間。
しかし最終日に、煌めく光の吹きガラスに恵まれた。
ガラス作家高臣大介にとって、僥倖とも思える幸福な時間だ
ったと私には思える。
*高臣大介ガラス展「重ねあう」-2月24日まで。
*豊平ヨシオ展ー3月5日(火)17日(日)
テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向き
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