会場で滞在製作した大きな絵画が、同じ漁業仲間の友人に売れる。
絵は網走の車道に古くからある白鳥と海の絵だ。
誰が描いたか不明の道路曲がり角沿い壁一面に描かれた絵。
佐々木恒雄はこの絵の写真を元に二羽を拡大し背後の青を
丹念に波に描き直し、二羽の白鳥を太い縁取りで力強く描き
直した。
この辺は佐々木のデザイン的才能が活きている。
そして原画より二羽だけ抽出し背後の波をダイナミックに
描き直した構成力色彩力は彼の優れた絵画力であるだろう。
この無名の路上の絵画は新たな命を得て活き返ったようだ。
この絵を見た同世代の漁師仲間の友人が感動して、二年後に予定
している新築の家に飾りたいと購入を決断した。
併せて今回展示したふたつの波の絵と共に欲しいという。
海上で仕事をする漁師にしか解らぬ波と海の状態。
会場一階正面に並んだ3枚の波の絵を見ながら、その時の海の
状態を楽しそうに話すふたりだ。
そんなふたりが、陸の車路の壁に大きく描かれた飛ぶ白鳥と海面
の絵画をひとりはその絵を再構成し、ひとりは新築する家の吹き抜け
に飾りたいと言う。
海の上を飛ぶ二羽の白鳥は、まるで海を仕事場とし陸で暮らす
ふたりではないのか、・・・。
そんな気が私にはした。
陸で生活し、海で働くふたりの心意気が力強く縁取りされた二羽の
白鳥と波の形象に響きあっている。
そして、それがふたりの網走なのだ。
札幌で描かれ完成したこの絵は、ふたりの共有する故郷・網走を経て、
故郷に還るのだ。
ふたりが掴んだ新たな故郷・網走と共に。
そして、これらの絵が並び飾られる時私もその前に立ち会いたいと、
私はふたりに申し入れたのだ。
*佐々木恒雄展「sign」-1月20日午後7時まで。
*高臣大介ガラス展ー2月12日―24日
*豊平ヨシオ展ー3月5日ー17日
テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向き
tel/fax011-737-5503