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2018年 09月 08日

地震と停電ーシジフォス(31)

<ブラックアウト>という非常装置が陥穽となり、
胆振大地震の影響で、全道で電気が切れる。
日常生活が如何に電気エネルギーに依存していたか。
電気力喪失と同時に揚水ポンプで水を汲み上げていたマン
ションの水道も停水し、仕舞い込んでいた電池ラジオの声
だけが外界の様子を伝えてくれた。
2018年9月6日(木)午前3時未明。
激しい揺れで目覚め、その時点で点いていたTVで地震
を知った。

それから2日。
ようやく電気も通じ普段の日常が戻る。
しかし以前とは何かが違う。
友人の車に乗せてもらい街中を走ると、信号が消えた
街角で、運転者同士が目と手で挨拶を交わし交差点の
ルールを自然と守っていた。
車が人間の顔をしていた。
石油エネルギーと電気エネルギーに代わり、人間の顔
をして労わりあっている。
そして暗闇の中で聞いたラジオの声。
被災地からの実況にも、被災者の声の真実味が、暖かく
肉声として響く。
目に映る映像に奪われていた声という音の感覚が、研ぎ
澄まされて、胸に届く。
こうした非常時に、人は五体五感の肉身に戻るのだ。
インフラに依存していた過剰な鎧が外され、一対一の個
の身体が適応している。
五感が本来の身体性に還り、皮膚感覚とともに活き活き
と蘇ってくる。
公共的な人の声を、こんなに親密に感じる事は近来少ない
経験のように思える。

大地震・電気のブラックアウトという非日常の現実の中で、
普段生活という日常が露わにしたものは、我々の日常が保
つ虚構の内側に在る本来の人間の在り方が自然に顕在化して
いるという経験である。
思えば地震・停電の一日前に記した競走馬を運ぶ大型トラック
の運転者と馬頭観音を祀った人間の話は、予兆のようにあった。
原子力エネルギーを持った鉄腕アトムの時代から、馬力エネルギー
は人間から離れ、我々の社会的インフラの主力エネルギーは、石炭
・石油・原子力となってきた。
その功罪を、問われている時代だ。

 空をこえて、ラララ 星のかなた
 ゆくぞアトム ジェットの限り
 心やさしい ラララ 科学の子
 十万馬力だ 鉄腕アトム

        作詞 谷川俊太郎
 
人間アトムは、何処へ向かう・・・?

*吉増剛造・村上仁美展「花人ト火ノ刺繍」-10月2日(火)-7日(日)

 テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目斜め通り西向き
 tel/fax011-737-5503



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by kakiten | 2018-09-08 14:35 | Comments(2)
Commented by shigeko at 2018-09-08 17:50 x

ご無事でよかったです!
こちらでも終日ラジオを聞いておりました。
あの声にどんなに救われたことか。
りかさんのお母様は電池難民になっておられたようでさぞ心細かったことでしょう。
くれぐれも余震に気をつけてお過ごし下さいますよう。
Commented by kakiten at 2018-09-08 18:49
> shigekoさん ありがとうございます。
そうでしたか、声が声だけで身体性を保っていました。息づかいも聞こえて被災者の声が伝わって参ります。利香さんの母上、そういえばここの近くでした。なにかあればお手伝いできます。
利香さん、shigekoさん、第二の百年記念塔のような伊藤邸マンション経由して緑の運河エルムゾーンを共に何時か歩きましょう。利香さんのご実家も通って・・。


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