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テンポラリー通信

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2018年 08月 17日

日々を継ぐ心の形象ーシジフォス(24)

斎藤周展2日目。
様々な時間を抱えて人が訪れる。
正面の大作斎藤周さんの父上の建てたアトリエ兼住宅の絵。
その木造2階建ての描き込まれた油彩を見ていた、高校時
代父上の教え子だったという中年の男性。
初めて授業で油彩に触れ、真っ黒な絵を描いた。
あの時なにを描き篭めたのだろう?、と呟いていた。
息子の周さんが、今は亡き父の住居兼アトリエを初めて
描いた油彩大作が、父の教え子の初めて油彩に触れた遠い
時間を思い出させていた。
アトリエ・住宅という仕事場兼住居の木造建築物。
それはそこを拠点に生きた人の親しいランド(郷)。
子供には遊び場だった長い廊下・階段。
父と遠出した冬のニセコの記憶と共に、今斉藤周さんの
ランド(郷)が、父の広い背中、アトリエ兼住居ととも
に小さな磁場を生んでいる。
その記憶の磁場に引き寄せられるように、訪れる人の記憶
もまた開き、語られていた。
父子二代の画家・教師稼業。
斎藤周展「継ぎ」は、今は無い住居・父の仕事場という
ランド(郷)を経て、心の<継>が過去と現在を結んでいる。
<郷>である<故(ゆえ)>を、木造の一軒の建物の記憶が
結晶して雪のように舞い・降る見えない心の故郷(ランド)
を形象しているのだ。

美術・絵画という人の心象が創り出す世界は、見えない心の
コア・拠点として、懐かしい風景を再生し世界と自分の踵・
軸心を創るのだ。
人間社会の意識の胎内記憶ー故郷(ふるさと)。
その故郷が磨り減り、新幹線・地下鉄の車窓の風景のように、
急速に過去・消去へと飛び去る現代。
斎藤周の画業は、現在という時間を過去ー未来に<継ぎ>と
繋ぐ原点再生として顕れている。

*斎藤周展「継ぎ」-8月15日(水)-26日(日)まで。
 am11時ーpm7時:月曜定休。
 テンポラリスペース札幌市北区北16西5丁目斜め通り西向き
 tel/fax011-737-5503


by kakiten | 2018-08-17 12:49 | Comments(0)


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