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テンポラリー通信

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2018年 08月 15日

斎藤周展始まるーシジフォス(23)

ひとつの転機を感じさせる。
今日始まった斎藤周展「継ぎ」。
入ってすぐ正面に父が建てた2階建て木造住居兼アトリエ。
今は無いその建物が今展示最大の大きさで油彩で描かれ
展示されている。
昨年6月CONTEXT・Sで発表した「片鱗」で感じた
内なるコアの舞い・降る解放感が、この亡き父・無き建物
の顕現によって、あるなにかの再生を印象付ける。
一番親しい他者・父の背中とその住まい・仕事場。
小さいけれど、それは自分と父・母を含めた斉藤周の人生
の根=ランド(国)なのだ。
齢50歳にして人生の過ぎ行く基底から発掘したランド(故郷)
の建物(家)である。
同じ画家でもあった父の遠い背中を見詰め、父の夢であった
アトリエ兼自宅が、今彼の絵の中でランドとして蘇っている。
これは郷愁ではない。
最後尾にして最前線ー最前線にして最後尾、ラディカルな
一人生の軸足・踵の風景なのだ。

人には人それぞれの個人的時間・理由(わけ)がある。
生きる事には些細な個人的な理由(わけ)がある。
作品という世界への架橋行為には、個人的な内に閉じる
凝固した理由(わけ)を、ある開かれた地平へと解き放っ
てもくれる。
そして作家自身が、身と心の内なる凝固を解き放ち、舞い
・降る雪の結晶のように宙(そら)の扉を叩く今がある。

*斎藤周展「継ぎ」-8月15日(水)-26日(日)
 am11時ーpm7時:月曜定休。

 テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目斜め通り西向き
 tel/fax011-737-5503



by kakiten | 2018-08-15 14:52 | Comments(0)


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