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テンポラリー通信

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2018年 08月 07日

2冊の本ーシジフォス(19)

東京八王子に住む菊井崇史さんから、同時発売の詩集
2冊が送られて来た。
350頁に及ぶ大冊「ゆきはての月日をわかつ伝書臨」
もう一冊は2012年発行の「遥かなる光郷へノ黙示」
復刻版。
昨年の足利市美術館ー今年の沖縄県立美術館ー今月から
始まる東京・渋谷区立松涛美術館の吉増剛造展「涯テノ
詩聲」共通の大冊カタログ三百頁弱編集に深く関わった
菊井さんが、自らの詩業に対してもひとつのけじめの
ように整えた今回の仕事と思われる。
2012年発行の「遥かなる光郷へノ黙示」は多分彼の
処女詩集と思われ、その<光郷>へ、再び熱い思いを込
めて350頁に及ぶ「ゆきはての 月日をわかつ 伝書
臨」という大冊長編詩を纏め2冊同時に出版した想いが
、二冊の表題からも伝わってくる気がした。
吉増剛造の2016年東京国立近代美術館から始まった
一連の美術館連続展示のトニカと軌を一にして、菊井崇史
の何かが弾けている。
私にはそんな気がしたのだ。
そして何よりもこの2冊の詩集のふたつのタイトル自体が、
その心の交感を何よりも顕している、と感じた。
この2冊は遠い過去と、数年を経たその近い過去とを
<ふたたび>の重層性の現在として見詰めている。
これはこの間一連の吉増剛造展が、基本モチーフとして
貫いているコンセプトと重なる。
勿論ふたりの生きた時代も年齢も違うのだけれど、自ら
個有の<月日をわかつ><遥かなる光郷へノ黙示>という
視座においては、同時代の交響構造が感じられるのだ。

ひとりの優れた仕事とは、交響し、またもうひとりの優れ
た仕事へと波及してゆく。
その事をなによりも示唆するかのように、1240頁余
の吉増剛造「火ノ刺繍」と、350頁弱の菊井崇史「ゆき
はての月日をわかつ伝書臨」大冊2冊が、兄弟のように目
の前に並んでいる。
優れたキューレーター正木基氏から預かった、彼の美術
視座の原点佐藤宗太郎の「石仏の解体」そして写真集
「石仏の美」3巻もまた、私の眼を待っている。
暫く書物の沈黙時間が続きそうだ。

*斎藤周展「継ぎ」-8月15日(水)ー26日(日)
 am11時ーpm7時;月曜定休。

 テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目斜め通り西向き
 tel/fax011-737-5503


by kakiten | 2018-08-07 16:04 | Comments(0)


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