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2018年 07月 28日

掌(てのひら)と書物ーシジフォス(15)

出版編集企画の竹中英俊さんが茅ケ崎から来て、本居宣長の
「古事記伝」原本を見せて頂いた。
前回見せて頂いた、25歳福沢諭吉編集の英語・中国語和語
辞典も、その苦闘する翻訳語に明治の若々しい青春を感じて
面白かったが、漢字・平仮名を駆使し古事記を日本語に定着
させた本居宣長の情熱が、装本・木版活字の美しさに顕れて
いて、感動した。
美濃紙を使った和紙の一葉、一葉の、時を超えた存在感。
そして掌にしっとりと納まる書物全体の存在感。
掌に保ち、一葉ずつ頁を捲る優しく微妙な指先の感覚。
18世紀の国学者本居宣長の瑞々しい感性が、そのまま
書物の形をして凝縮している。
三百年近い時を超えて、この書物自体が少しも古びては
いない。
漢字に訓読みを加え、平仮名と漢字を組み合わせた文章。
それをしっかりと受け止めている木版文字と美濃紙の
しなやかな強靭さ。
そして何よりも和紙と木版印刷とが保つ植物の有機的な
相性が奏でる心地良さ。
さらにその総体を掌(てのひら)で受け止め、包み、捲る
快い重さ。
人の手に渡り、人の手の油を吸い、さらに書物は長持ちし
活きてゆくと云う。
短い最新が横行し、直ちに古へと見捨てられて行く現代。
その価値基準とは対極にある書物という有機的なモノ。
そんな背筋を伸ばし書物と向き合う時間を、何時の間にか
喪ってきた自分を思うのだ。

もう古い、最新の・・と警告を送ってくるパソコンの画面
を睨みながら。

*斎藤周展「継へ」-8月15日(水)ー26日(日)
 am11時ーpm7時・月曜定休。

 テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目斜め通り西向き
 tel/fax011-737-5503

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by kakiten | 2018-07-28 14:23 | Comments(0)


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