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2018年 07月 24日

送り・送られてーシジフォス(14)

チQ君から電話が来る。
母上が亡くなられたと言う。
明日千歳でお葬式。
先週初の個展を自分と母上の為に終え、会期中母上
は病院から自宅に戻り、彼を送り出していたと聞く。
会場まで一度は来て見てもらいたい、と願っていた
が、いまいち体調が整わず個展終了時家で母上の為
に描いた新作を見せたと言う。
母上の名前碧(みどり)の地に銀の経文が書かれた
組作品9点と、ガンに侵された肝臓・脾臓の形を
モチーフに島のように描いた碧(あお)と碧(みど
り)の作品だ。
会場では1階正面に組作品9点と右壁に1点展示
されていた。
母上は黙って、じっと作品を見ていたと言う。
その後病院に帰り、間もなく息を引き取った。

南の島沖縄や先祖の島佐渡島に憧れ、ここ十数年放浪
を繰り返していたチQ君が、母上の病んだ内臓をまる
で島のように象り、銀の文字と碧色で彩った絵画。
彼自身の内なる島を最も身近な母の内に発見したかの
ような美しい作品だった。
お母さんは何も言わずとも、心の心緒でじっと感じて
いたに違いない。
本当に個展出来て良かったです・・。
見てもらって良かったです・・・。
少し涙声のチQ君だった。

個展中我が家に戻り、家から息子を見送った碧さん。
そして個展の終わりを見届けるように、その後病院に
戻り遠い国へ旅立って行った。
今度はチQ君が見送る番だね・・。
私は初の個展を終えた労いと共に、そう彼に伝えた。

たった一枚の絵にも、個人的な理由(わけ)がある。
遠い島への憧れにも、個人的な身近な理由がある。
その身近な理由(わけ)と向き合い、全力で表現しよう
とした時、踵(かかと)の芯から湧き上がる視界がある。
爪先を跳ばす遠い眼差しは、見えない踵(かかと)の内
なる眼差しとなって、重く病んだ碧の内臓を見たのだ。
表現する、顕すとは、母上とチQ君の、見送り・見送ら
れる行為に似てる。
個展会期中母上の束の間の滞在は、その心の顕われなのだ。
今回の新作に在ったように、作品の内に滞在したふたりの
心は、祭壇に作品をそっと飾る積りと語ったチQ君の最後の
言葉にも響いていた。

*斎藤周展「継ぎへ」-8月15日(水)-26日(日)
 am11時ーpm7時:月曜定休。

 テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向き
 tel/fax011-737-5503






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by kakiten | 2018-07-24 14:05 | Comments(0)


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