ギャラリー吹き抜け上の、小さな事務所でブログを
打ち込んでいた。
階下にふっと人の気配がして、真っ赤なワンピース
を着た若い女性と男性の姿が見えた。
入って良いか、と聞く。
どうぞ、と応え階下に降りた。
男性は欧米人のようで、寡黙である。
展示中の故八木保次さんの知り合いとも思えない。
若い女性は身重らしく、お腹が少し大きい。
その内外国人の男性が、南窓上部にある八木保次の
黒一色の書のような横長の作品を指さし、値段を聞いた。
1988年円山時代個展の折り、会場で一気に描いた
抽象画である。
時を経て3っに折れて補強して展示している。
私の好きな作品で、毎年追悼展には必ず展示している。
他の積んであるガッシュ作品から選んで壁に並べた赤い
作品と2点欲しいという。
通訳は赤い服の女性で、こちらも少し発音が日本人らしく
ないが、言葉は流調で分りやすいい。
聞くと中国の人で、旦那さんはスイス人という。
そして中国の女性は7年前北大に留学し、この近くに下宿
していたと言う。
テンポラリースペースは通り道で知っていたらしい。
旦那さんに自分の青春を過ごした大学構内と住んでいた界隈
を案内し、スイス土産に自分たちの記念としてこの2点の絵
を購入して帰国するのだ。
台風の影響で雨降る中、今夜札幌を発つと聞き、梱包を
しっかりしなければと思った。
閉廊時間の午後7時までもう一度銀行でお金をおろして
から来ると言った。
故郷中国を離れ、北海道大学で学び、スイス人と恋をし
スイスに住む。
その直前母校と母校沿いの斜め通りの自分の住んでいた地域。
その近くの寂れた前から気になっていた画廊。
案内してそこで旦那さんが選んだ赤いガッシュと墨象の抽象画。
奥さんの方は、実は小さな赤いガッシュ画が好きだという。
もう一点赤い大きめのガッシュ画を選んだ旦那さんの気持ち
がなんとなく解ったような気がした。
着ていた赤いワンピース。
あの赤もきっと国を顕す赤ではない。
国を離れ異国へ行く個の選んだ燃える赤。
そしてこの北大界隈は、彼女自身の小さな故郷。
そう感じた。
八木保次さんの作品がスイスへ一緒に旅立つ。
私が私蔵しているよりは、その方が数段良い。
今、絵は赤いワンピースの身重な女性と同じように
ひとりで旅立ってゆくのだ。
絵の作者の来歴も顔も何も知らない国へ。
作品もまた中国のこの女性と同じように、個として、
個の魅力として立つのである。
八木保次さんの新聞資料等をしきりに写真に収めて
いる旦那の姿があった。
*八木保次遺作ガッシュ展ー7月8日(日)まで。
am12時ーpm7時:水・金・午後3時閉廊
*チQ展「NMAMDB」-7月10日(月)-15日(日)
テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向き
tel/fax011-737-5503
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