テンポラリー通信

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2018年 06月 26日

<&>という自然ーシジフォス(3)

ベルリンから美術家の谷口顕一郎・彩子さんが来ている。
13年前稚内からサハリンを経てドイツへ渡ったふたり。
彩さんが書いたその詳細な旅の記録と写真。
それは今も大事に私の手元にある。
今回は札幌市の公的文化施設に選ばれた作品を設置する
為に帰国したのだ。
秋に完成されお披露目される同時期に、テンポラリー
スペースでも個展をしたいと話があった。
私はその気持ちは嬉しかったが、公的な大作展示とは別
に、一昨年の本郷新賞受賞と連続して行われた札幌彫刻
美術館個展で見せた札幌をモチーフとするふたりの故郷
を再びテーマとするなにかをテーマとしたい、と考えて
いた。
そこで以前から谷口顕一郎さんが語っていた作品作家名
を、初めてここで表してはどうかと提案した。
それはケン&アヤ=タニグチである。

私は以前から好きだったモダーンジャズグループMJQ
のリーダージョン・ルイスが、モダーンジャズにバッハ
の奏法を取り入れ、ジャンルの偏見、人種差別の偏見と
闘い、晩年奥さんのミリヤナさんと二人だけでバッハの
ゴールドベルク変奏曲を遺したのを思い出していた。
最後に掛け替えのない半身である人と対の名で、それは
発表されている。
ジョン&ミリヤナ=ルイス。

故郷の社会主義国圏からアメリカへ亡命し、梱包のインス
タレーション作品を世界に発表し続けて来たクリスト夫妻。
ともに亡命・離国という苦労を背負って20世紀を代表する
作品を生み続けたふたりは、
クリスト&ジャンヌ=クロードの名で作品を発表している。

民主主義の基本である男女平等の思想を1945年占領国アメ
リカより受け入れて70年余が過ぎた。
もう観念・概念ではなく、ジョンやクリストのようにふたりの
名前が前に出た芸術家が日本にも出て良いじゃないか。
そう提案したのだ。
その最初の個展を故郷札幌で、テンポラリースペースで
やって欲しい・・と。
その話をすると、何故か彩さんの眼から涙が止まらない。
ふたりで稚内港から不安を沢山抱えたままシベリア大陸を
横断した苦労が喜びが込み上げてくるのだろうか。
あるいは異国欧州で重ねた心労が思い起こされたのだろうか
私はそれで良い、と思った。
偉大なる音楽・美術のふたりの先輩たちも、真にふたりが
人間として苦労を越えて来たからこそ<&>が生まれたのだ。
誰でもが形式としてできる事ではない。
そして<&>は、決して<=>ではない。

納得してからで好い・・・。
これは公的な名誉に便乗してする展示ではない。
ふたりと日本の戦後近代の、慎ましい真の表現行為なのだ。
誇りを保ってケンの為、アヤの為、故郷に錦を贈ろう。
飾りでは、ない。

*八木保次遺作ガッシュ展ー6月26日(火)-7月8日(日)
 am12時ーpm7時:月曜定休(水・金 午後3時閉廊)
*チQ展ー7月10日ー15日

 テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向き
 tel/fax011-737-5503



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by kakiten | 2018-06-26 14:32 | Comments(0)


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