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テンポラリー通信

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2018年 05月 22日

及川恒平×山田航ライブーサッポロ・ランド(7)

20日夕刻フォークソングの草分け及川恒平さん
と現代短歌の歌人山田航さんの年2,3回恒例
のライブがあった。
いつもどちらともなく題を決めふたりそれぞれ
が、ソングと朗誦で表現をする。
今回は「麦」がお題である。
ある種違和を唱えたのは、年長の及川さん。
俺は麦について何も知らない、
麦畑も見た事がない。
それでなんの違和もなく生きて来た。

そんな思いを及川さんは詩にして唄った。
山田さんは、トーストを主題に詩を創り朗誦した。

このふたりの麦への反応が面白かった。
日本は麦文化が希薄だ。
麦茶くらいが伝統的な麦文化だろうか。
麦酒、ビールは近代に入って渡来した飲み物である。
パンも然りだ。
圧倒的に稲文化が勝っている。
しかし今は、お米・ライス以外は希薄になりつつある。
やがて麦と同じくらい日常から縁遠くなるかも知れない。
お米一俵、酒一升、土地一坪(畳2畳)の単位。
畳・藁という米粒以外の稲穂の存在。
〆飾り等衣食住に深く関わった稲文化。
今は手軽で便利な石油化工製品プラスチックに
その利用価値を奪われている。
大量生産・大量消費そして大量破棄の物流文化。

一方麦文化は、日本の近代化とともにパンとして
根付き、戦後現代はアメリカ文化・トーストとして
バター、珈琲、トースターとともに根付いた。
ドイツパン、フランスパン、イギリスパンなどの
欧州麦文化とはまた一味違うトーストというアメリカ
文化。
山田さんのトーストの歌、及川さんの麦なんて知らない
の歌唱。
及川さんと山田さんの1945年を挟んだ世代差も
麦文化への親和感の差異として感じられて面白かった。

フォーク界でも反戦や生活といった社会性の強い主流に
対峙するかのように、北海道生まれの透明な季節感、空気感
を伸び伸びと歌い上げる今も変わらぬ及川さんの生き方、
歌唱力、作詩力。
北の風土への愛着がきっと麦への違和感としてあったのだ
ろう。
戦後アメリカ近代のど真ん中で生まれた山田さんには、
正にトーストこそが戦後日常そのものだったと思う。
ふたりの麦は、これからも姿を変え、ふたりの日常の根で
近代をモダニズムを問い掛け続けるだろう。

 テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向き
 tel/fax011-737-5503


by kakiten | 2018-05-22 13:05 | Comments(0)


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