石狩川河口近く江別で生まれ育った秋元さんが
故里を新たに見詰めるように、踵の視線・自耕する
視角から故里江別の風土を再構成している。
吹き抜け2階の床に咲くように数十本生えている麦。
床を透かせて下に延びる茎。
1階床中央に置かれた一枚の円い鏡が泉のように
その天井周囲を映す。
そして周りの南・東壁には江別の風景が淡いドローイ
ングで拡がり、北壁には江別地域地形図が拡がっている。
吹き抜け上部は地上の風の世界、吹き抜け下は風土の
土の世界。
それらが麦の穂と麦の茎・根の世界で繋がり、現世を
顕現させている。
踵から立ち上がる身体としての故里。
そんな作者の江別への愛が、ここには感じられる。
爪先だって先へ先へと横軸をひた走る直線移動の現代
社会への苦い思いもそこには篭められている気もする。
吹き抜け壁の棚には、江別の古い歴史資料も並べられ、
現在に至る江別社会時間の土も踏み固まれている。
人間にとって大切な風土という自然と社会の界(さかい)。
地球と宇宙の間の大気層や裸体と外界の間・衣装のように
接する個有な文化ゾーン。
人それぞれ、土地それぞれに存る固有性を生まれ育った
江別から掘り下げていく地道な試みを深化させて、「ラ
ンドへ」展はある、と思う。
初日、梯子・階段を昇り降りしながら、体感を嬌声に変え
声を揚げる人たちの感性にも何かが経験されている事だろう。
*秋元さなえ展「ランドへ」-3月20日(火)ー25日(日)
am11時ーpm7時
テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向き
tel/fax011-737-5503