毎日せっせと水を降りかけている「野傍の泉池」
軒下の二本のガラス房。
とうとう氷がガラスを覆うようになった。
その間彼が学んだ事がある。
軒下の氷柱は屋根の雪が水源だ。
そこも創らなくては、という発想である。
野上裕之さんの創った鉛の看板にも雪の塊りを
くっ付け霧吹きで水を注ぐ。
すると寒気・暖気交互の日々の温度差でガラス
の房は氷で包まれるようになり、ガラスの房を
氷の房が抱きしめるように包んできた。
氷の水とガラスの抱擁である。
千葉から移住して来た当初、戸惑いとともに
見詰めていた氷柱。
透明なガラス制作を志し、自然の当たり前に
吊り下がる軒下の氷柱に感じたある当惑。
さらにガラスは夏のもので、冬には向かない
という先入感。
そこで冬の氷柱と勝負する気持ちで、敢えて
数百本冬場に制作し窓の氷柱と勝負した十数年
前の器のギャラリー中森。
さらにここでの札幌の原風景、清華亭庭春楡の大樹
脇の枯れた泉池傍で、「ヌプサムメムー野傍の泉池」
を制作し、地の底から湧き出る水の変わらぬ生命力
を自らの生きる力に重ねた経験。
それらが今、異郷の氷柱が対峙するものではなく
抱擁する愛力としてガラスの氷柱を抱擁し一体と
なって夕暮れの光に煌いている。
ガラス戸の内側に3年前制作の「野傍の泉池」
さらに内側には昨年フランスで制作した「野傍
の泉池」。
外に見える氷が衣装のように抱擁し刻々変化する
二本の「野傍の泉池」。
この3っの作品が時を超えて夕陽の光に煌くさまは、
本当に美しい時間である。
ヌプサムメム「野傍の泉池」-高臣大介の”泉池”
が湧き出ている。
人が風土・自然とともに生きるという事。
そこに小さなカルチャー(耕土)、小さなランド(耕野)
が生まれているような気がする。
*高臣大介ガラス展「紡ぎあう」-前期2月4日まで。
後期2月6日ー12日(月)まで、
*鈴木余位・村上仁美展「ふたたび 花傍らに」-2月27日
-3月11日。
*秋元さなえ展ー3月20日ー25日
テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向き
tel/fax011-737-5503