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テンポラリー通信

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2006年 07月 29日

白樺の夜ー界を生きる(32)

夕暮れが濃くなり行き交う車のライトが光を増すころ、白樺の傍で村岸さんのギ
ター演奏が始った。低く音を確かめるようにギターに耳を寄せ最初の音が弾き出
される。車の音が気になる。金曜日の夜どこかへ出かけるのかひっきり無しにエ
ンジン音が響く。ちよっとやりにくそうだった。最後バッハの曲を弾き終わり休憩
に入る。後半は二階吹き抜けの窓際ベンチに演奏のステージを移動する。聞き
手は下の床に座布団を敷き座る。途中二階の窓を閉めに梁を渡ろうとして白樺
を吊っているワイヤーを引っ掛け一瞬危なかった。木もろとも落下するところだ
った。幸い木も私も無事。なにか昨日の自転車事故といい続いたね。
暗闇でうっかりワイヤーのこと忘れて梁を渡ったのだ。そんなハプニングを経て
吹き抜けの上から演奏が始る。音が格段にいい。窓を閉めて車の音も薄まる。
白樺にスポットが一灯だけ当たり上部の村岸さんには蝋燭の灯が灯された。
心地よくギターの音色が響き渡る。そして夜の空気に溶け込む。終演後前回
展示した藤谷康晴さんほかふたりが残った。そして程なく酒井博史さんが遅れ
て来た。酒井さんのためにと村岸さんがもう一度上に上がり演奏しだした。激し
い弦捌き、あっという間に彼は全身の力を振り絞りやがてベンチにうつ伏せに
倒れこんだ。その後酒井さんがお返しに一曲朗々と歌い、村岸宏昭展最後の
白樺の夜は終わった。展示は一応30日まで延長しビデオ撮影その他の記録
をする。まだご覧になっていない方是非見てあげて下さい。作家も夕方には
在廊しています。「木は水を運ぶ」この<運ぶ>は<porte>で入口という意味
を持つと会場にパネルで掲示されている。アイヌ語のイパル、イフツのようで
興味深かった。テンポラリースペースその入口を飾るに相応しい白樺の木の
<porte>。村岸さんありがとうございました。昨夜のコンサート十分に言葉
に置き換えることは出来ません。また敢えてしたいとも思ってはいません。
特に最後の演奏は言葉になりません。あの激しさは多分村岸さんにとっても
初めてのことだったのではないでしょうか。あなたも<porte>-(ある分野へ
の)入り口、扉ーを、昨夜開いたのでしょう。この白樺の木とともに。

by kakiten | 2006-07-29 12:49 | Comments(0)


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