栃木・足利の旅をゆっくり総括するように記しながら、
その間に正月2日から7日まで岡田綾子展が始まった。
初個展である。
11年前今の場所に移転し5月に再開したテンポラ
リースペース。
最初展示を飾ったのは、ガラス作家高臣大介展、そし
て街を透視する藤谷康晴のラデイカル絵画、その後が
北大生の俊英村岸宏昭、今は伝説の「木は水を運んで
いる」展だった。
その村岸が、展示終了の2週間後旅先の高知の鏡川
で遭難溺死の一報が届いた時一番最初にテンポラリー
に駆け付け休廊で閉じたシャッターの前で泣いていた
のが岡田綾子だった。
その可愛らしい背の高い少女が今、結婚し初の個展を
開いている。
作品は手縫いのヒト、トリ、モノ、カタチが様々な
色の布を折り合わせられ、置かれ、吊るされ、跳んで
時にユーモラスな暖かい不思議な作品空間を出現させ
ている。
友人の不意の死の報に旅の途中から折り返し、個展
の記憶のまだ生々しいこの場所へ真っ先に駆け付けて
泣いていた少女も結婚してホームを作ったんだなあ、
と、ふっと思う。
南那須郡大桶から足利へホテルから5、6回往復した
道に綴られていた集落、村、町を、広く、近く、遠く、
囲む垣根のような柔らかい山並みを想い出していた。
あの風景もまた人間社会のホームなんだなあ・・・と。
野生自然と人間社会の間を保つ柔らかい自然。
ひとりの人間もまた世間という社会に対して同じ構造の
界(さかい)、間(あいだ)を、柔らかな緩衝ゾーンと
して創り、保つ。
岡田綾子展のタイトル「metamorphosis-
あいだの部屋」とは、彼女が今獲得した社会と自己の間、
ホームという里山が反映しているのかも知れない。
社会的存在でもあり同時に生物として自然的存在でもあ
る人間は、世間という環境社会に対しても小さな心の里山
=ホーム(家族)を創って生きていくのだ。
栃木・足利の旅をまだ遠く推敲しながら、そんな事を
思っていた。
*岡田綾子展「metamorphosis-あいだの部屋」
1月7日(日)まで。
*高臣大介ガラス展「紡ぎあう」-1月30日ー2月12日
*鈴木余位・村上仁美展「ふたたび 花・・傍(かたわら)に」
2月中旬~吉増剛造「火の刺繍」響文社刊行に添い展示。
テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向き
tel/fax011-737-5503