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テンポラリー通信

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2018年 01月 06日

あいだの部屋ー栃木・足利の旅(5)

栃木・足利の旅をゆっくり総括するように記しながら、
その間に正月2日から7日まで岡田綾子展が始まった。
初個展である。
11年前今の場所に移転し5月に再開したテンポラ
リースペース。
最初展示を飾ったのは、ガラス作家高臣大介展、そし
て街を透視する藤谷康晴のラデイカル絵画、その後が
北大生の俊英村岸宏昭、今は伝説の「木は水を運んで
いる」展だった。
その村岸が、展示終了の2週間後旅先の高知の鏡川
で遭難溺死の一報が届いた時一番最初にテンポラリー
に駆け付け休廊で閉じたシャッターの前で泣いていた
のが岡田綾子だった。
その可愛らしい背の高い少女が今、結婚し初の個展を
開いている。
作品は手縫いのヒト、トリ、モノ、カタチが様々な
色の布を折り合わせられ、置かれ、吊るされ、跳んで
時にユーモラスな暖かい不思議な作品空間を出現させ
ている。
友人の不意の死の報に旅の途中から折り返し、個展
の記憶のまだ生々しいこの場所へ真っ先に駆け付けて
泣いていた少女も結婚してホームを作ったんだなあ、
と、ふっと思う。
南那須郡大桶から足利へホテルから5、6回往復した
道に綴られていた集落、村、町を、広く、近く、遠く、
囲む垣根のような柔らかい山並みを想い出していた。
あの風景もまた人間社会のホームなんだなあ・・・と。
野生自然と人間社会の間を保つ柔らかい自然。
ひとりの人間もまた世間という社会に対して同じ構造の
界(さかい)、間(あいだ)を、柔らかな緩衝ゾーンと
して創り、保つ。
岡田綾子展のタイトル「metamorphosis-
あいだの部屋」とは、彼女が今獲得した社会と自己の間、
ホームという里山が反映しているのかも知れない。
社会的存在でもあり同時に生物として自然的存在でもあ
る人間は、世間という環境社会に対しても小さな心の里山
=ホーム(家族)を創って生きていくのだ。

栃木・足利の旅をまだ遠く推敲しながら、そんな事を
思っていた。

*岡田綾子展「metamorphosis-あいだの部屋」
 1月7日(日)まで。
*高臣大介ガラス展「紡ぎあう」-1月30日ー2月12日
*鈴木余位・村上仁美展「ふたたび 花・・傍(かたわら)に」
 2月中旬~吉増剛造「火の刺繍」響文社刊行に添い展示。

 テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向き
 tel/fax011-737-5503


by kakiten | 2018-01-06 13:15 | Comments(0)


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