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2017年 08月 23日

<移>ル・故里ー緑陰(17)

写真家のT氏が個展終了後来廊。
個展の反響、愛娘Uちゃんの近況などを話す。
父娘二人三脚のようなふたりの人生の転換点。
こんな父娘も珍しく、幸せと思う。
Uちゃんは高校2年生にして、もう来月から
東京生活が始まるようだ。
石狩で裸馬に乗り喜々とする16歳。
同時に東京の最前線で自分の人生を切り拓いている。

夕刻旧ゆかりの名料理人CHIZUさんが来る。
閉店したゆかりの後は今、若い人が無農薬の料理と
お酒の店を開いているという。
今日一緒にどう、と言う。
同所で10年続けた宇田川洋さんの居酒屋ゆかり。
閉店以降界隈に近づいていないので、久し振りに
行く気になった。
閉廊後出掛けると、若い男のマスターがひとりで
切り盛りしていた。
料理は洒落た洋風で味も良く、お酒も日本酒から
ワイン、ウイスキーと揃い、一生懸命さが伝わる。
私も久し振りに一合桝になみなみとグラスで盛られ
た日本酒大山を二杯飲んだ。
控えめで無口な若いマスターの生まれを聞くと、
少し奥目の眼差しで、小さくフクシマと応えた。
それまでCHIZUさんと吉増展の話で何度かフク
シマの話もしていたので、一瞬吃驚する。
詳しくは聞かなかったけれど、男ひとり札幌へ移住し
ここで新たな生計を建てている。
宇田川さんの居酒屋ゆかりをリニュアルし、洋風
居酒屋として、無農薬の食材を標榜し開いたのだ。
旧店舗と比べながら、CHIZUさんが此処は変わり、
此処は前のまま活かしいる、と我が子の自慢をする
ように最初に説明してくれた。
無農薬食材の説明もその中に入っている。
閉店した愛着ある店の後釜新しいマスター兼シェフの
若者が気に入ってもいるようだ。

生まれが福島と聞いてから、私にはこの間の吉増展
2011年12月「石狩河口/坐ル ふたたび」から
始まった色んな想いが尚更のように浮かんできた。
そして今年出逢った浪江出身の男の涙、札幌国際芸術祭
ゲスト・ディレクター、福島生まれ大友良英に見た涙目。
吉増剛造の<ふたたび>が耕した<ふたたび>の耕土には
、再度という重複ではない、ふたたびの土壌が開墾され
ている。
国内市町村別で一番多くのブラジル移民者を出したのは
浪江という。
移動・移住・移民。
この頭の<移>が大きく増幅して動・住・民の根が希薄
・薄弱になりつつある現在を思うのだ。
<移>が漂流し根無し草となる<難>の時代とならぬよう
精神(こころ)は深く根を降ろす磁場を耕さねばならぬ。
久し振りのお酒に揺れる頭は考えていたのだ。
無口で静かなフクシマのマスターの目をどこか感じながら
・・・。

大野先生、ダンスを超え先生の舞踏という言葉が独り立ち
したように、難民の時代自分の生きる磁場が独り立ちしな
ければ・・と思っていました。
大野先生、吉本隆明さん、剛造さん、・・・、
そしてCHIZUさん、フクシマの青年に逢わせてくれて、
ありがとう・・・。

*「大野一雄の記憶ー公演ポスターを主に」ー8月27日まで。
 水・金am12時ーpm3時半。火・木・土・日am12時ー
 pm7時:月曜定休。

 テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向き
 tel/fax011-737-5503
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by kakiten | 2017-08-23 14:17 | Comments(0)


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