炎天、蒸し暑い日。夕刻ふらりとフリーでデザインの仕事をしている山内慶さん
がウオッカとジンジャーエールを持って現われた。以前に南米の蝶の羽を飾った
装飾品の額のガラスが壊れ蝶が好きだというので彼に差し上げた事があったが
その蝶の羽を丁寧にアレンジして西条八十の詩と組み合わせ新たに額装して
届けてくれたのだ。さらにロープシンの蒼ざめた馬の一節ともうひとつ三部作を
仕上げたといって持って来た。どれも繊細で美しい蝶の羽とぴったりの力作だ
った。この南米の蝶はモルフオといって蝶の中でも最も美しいものだそうである。
絹か真珠のような艶があり角度光の具合で幾重にも色彩が交差する。その蝶の
一片に文章が添えられてある。西条八十の詩は「蝶」というタイトルで次のような
ものだった。
やがて地獄へ下るとき
そこに待つ父母や友人に
私は何を持っていかう
たぶん私は懐から蒼白め、
壊れた蝶の死骸をとり出すだろう。
そうして渡しながら言ふだろう。
一生を子供のやうに、さみしく、
これを追ってゐました、と。
蝶の羽の妖しい美しい色とこの詩はピッタリと合って不思議な世界を創りだしてい
た。ウオッカとジンジャーで割った何とかという飲み物がほどよく酔いとなって話し
ている。田中綾さんもみえて一気に座が華やいできた。綾さんは花火大会へ行く
とか言う事で先に帰ったがその後男四人でしばし何かを話し込んだが今記憶には
もうない。蝶と西条八十の詩の保つ妖しくどこか切ない世界に呑みこまれたのかも
しれない。そんな真夏日の夜だった。今朝の机にはウオッカの空き瓶と空のグラス
が白い顔をして転がっていた。
*本日15日午後7時から児玉文暁「歩き人ふみの徒歩世界旅行」旅の話とスライド
ワンドリンク付き1000円
*村岸宏昭展「木は水を運んでいる」18日(火)~28日(金)