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テンポラリー通信

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2017年 06月 22日

巡り手「歌・光・花」ー泉=メム(12)

山葡萄の蔓が北壁を這い、吹き抜けの梁からも下へ。
そこに透明なガラス盤冬光が光を溜め浮いている。
窓から見える外壁の蔦の緑と陽光が内と外で呼応する
ように空間が浮き上がってきた。
田野崎文「巡り手 歌・光・花」会場。
当初田野崎文さんのライブという事だったが、一日
限りの3人展となった。
仕事を休み、洞爺から作品を用意し展示した高臣大介
さん、そして山に行き、市場に行き、納得のいく素材
を集め現場で構成した村上仁美さん。
午後7時開演前にリハーサルも兼ね早めに会場に来た
田野崎文さんも暫し息を飲み目を見張った。
歌・田野崎文 光・高臣大介 花・村上仁美3人揃う。
リハーサルももう本番さながらに気合いが入っている。
私や高臣大介さんが6年前彼女の歌を知った「この道」
と「逢いたくて」。
その「逢いたくて」を私と大介さんが思いがけず最初に
生で聴く事になる。
思わずふたりで、聴き終わり握手。
この後解ったのだが、本人はこの2曲の事はもう忘れ
ていたという。
「この道」は深夜時計台の前でひとりギター片手に歌い、
音源の事も定かではないらしい。
もうひとつの「逢いたい」も忘れかけていたという。
この2曲をダビングして呉れたF・翼君、それを聴き
心に沁みた私と高臣大介さん。
その幻の2曲が村上さんと田野崎さんの縁を繋ぎ、この
ライブとなった。
作品というものの不思議。
作者を離れてひとり歩きし、見知らぬ心に住んでいる。

来月以降海外に行く予定の田野崎さんの事情もあぅて
急遽組まれた今回の3人展ライブ。
田野崎さんは自身が忘れかけていたかも知れない心の
原点をふたたび見詰める機会ともなった。
東京での歌手活動に自信を失いかけていた時、故郷に
戻り歌の故郷時計台の前でひとり唄った「この道」。
今回のライブで最後に楽器なしで歌詞を思い起こしな
がら唄っていた。
そして「逢いたくて」はお客さんが帰った後、キャンド
ルだけとなった会場でリハーサル、本番を含め三度も
唄っていた。

歌を唄う心の故郷。
その土壌には、人を想う心の耕土と風景という心の耕土
がある。
「逢いたくて」は人を想う原点、「この道」は石狩生ま
れの田野崎さんの北の唄う原風景なのだろう。
東京の音楽芸能で疲れ切った心が求めた故郷・原点。
その思いがこの二曲には籠められている。
そして時と共に忘れられていた2曲。
それが何故か見も知らぬ私と大介の心に居着いていた。
その意味では不思議な3人展、不思議なライブ空間だった。

*3人展「なんのためにあるのか」ー6月23日(金)ー7月2日(日)
 あm11時ーpm7時:月曜定休。

 テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向き
 tel/fax011-737-5503

by kakiten | 2017-06-22 12:45 | Comments(0)


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