画家の花田和治さんが亡くなったという。
飄々として鋭く時に過激で、邪気のない人だった。
今の場所に移転する前自宅に臥せている佐佐木方齋宅
に私を案内してくれたのが花田さんだった。
当時世間に見離されていた方齋を変わらぬ友情で付き
合っていたのは花田さんだけだったかと思う。
私は初めて方齋宅を訪れ、寝たままの方齋を見舞った。
そして部屋に乱雑に置かれた彼の編集した「美術ノート」
全巻を改めて見て、’80年代疾駆した彼の業績を思った。
美術家として、同時に企画者として現代作家展の主宰、
さらに批評誌としての美術ノート単独編集発行。
’90年代以降病床に臥せ一切の活動を停止していた彼を
このままにしてはいけない。
そう思い初期代表作「格子群」を皮切りに、未発表の作品
の数々を次々毎年展示し、その後新作を発表するまで彼は
回復したのだった。
この方齋の復活には花田さんの変わらぬ方齋への友情の
存在が大きくあったと思う。
花田和治さんは、そういう温かで熱い心の人だった。
日本海沿岸の大きな漁師番家の血を引く生まれで、東京
芸大を出て画業一筋。
その画風はシンプルな線描と大きな構図で、やはり海・空
を思わせる豊かで深い構図が特色だった。
テンポラリースペース2004年の個展と、道立近代美術
館での秀作個展が忘れられない。
陸と海、空と山稜、人の心と心。
そうした界(さかい)の世界を、実にシンプルな描線で深
く印象付ける剛直でかつ柔軟な心の作家であったと今思う。
今少し、もっと花田番家の話や海の事など彼から多く聞き
たかった、としみじみ思うのだ。
*吉増剛造展「火ノ刺繍乃道(ルー)」ー5月9日ー28日
*及川恒平×山田航ライブ「傘」ー5月13日午後5時~
予約2500円
テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向き
tel/fax011-737-5503