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2017年 03月 21日

<爪先・踵>考ー湿地帯(24)

ほぼ同時に送られてきた3人のDVD、本内容予告、詩集
を見ながら、共通する今を思っていた。
小林重予さんのDVD「心の庭で 言の葉を囁く」は、
自然・生物・人に接する柔らかで愛に満ちた基本姿勢が
深く感じられる内容である。
彼女の造形作品とはまたひと味違う二人の優れた散文朗読
者によって、彼女の肉声が伝わってくるようだ。
冬眠する熊の話や甘栗が好物の祖母の話などは、特にユー
モアに満ちていながら現代社会を鋭く撃つ。
朗読される11編全ての話にそうした現実社会への彼女の
立ち位置が踵のように確かなのだ。

吉増剛造さんの新刊「火ノ刺繍」(響文社刊)は、副題に
2008-2016と表示されている。
しかしその大半は2011年を基点とした3・11以降の
対話15回・詩・論・エッセイそして吉原洋一氏による
2011年2月ー2012年2月までの吉増剛造を各地で
撮った写真で構成されている。
2011年12月から始まった「石狩河口/坐る ふたたび」
展を基本底流とする「怪物君」に至る現在までの吉増剛造の
精力的な軌跡が網羅されている。
3・11以降を今生きる詩人のラデイカルな精神の踵(かかと
)を刻むような本となるだろう。

桑名正和さんこと白島真の詩集「死水晶」(七月堂刊)は、
1974年から2016年まで書き記した詩を一冊に纏め
人生の軌跡そのもののような詩集である。
特に長文の歌人福島泰樹の後書きが、桑名さんとの交流を
通して福島自身の短歌絶叫活動とも重なりある時代とその
高揚が脈打つように躍動し熱く書かれていて印象的だ。
東京で生まれ長じて札幌で会社を興し今は岐阜に住む彼の
心の踵(かかと)そのもののような詩集である。

3人3様の心の踵。
それは時代を生きる心の爪先が、精神の踵(かかと)を構築
し時代の地に足を根差す果敢なる記録のように思える。
踵(かかと)は根であり拠点であって、爪先は視線でもある。
3人の視線と拠点が、交流した人・時代・社会を通して今と
いう時代を深く照射し歩いている。

*八木保次・伸子追悼「サッポロの彩(いろ)」ー4月4日ー16日
*吉増剛造展「火ノ刺繍乃道(ルー)」ー5月予定

 テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向き
 tel/fax011-737-5503
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by kakiten | 2017-03-21 15:14 | Comments(0)


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