行く人来る人と交感の多い1月が過ぎた。
作品を携えドイツへ、フランスへ、そして手仕事展の総決算
のように秋田からと人の往来が続く。
太田ヒロさん、小林東さんの逝去という逝く人の知らせもあった。
「百年の予定」展という福井から帰省した森本めぐみさんの
乳飲み子を抱いた年を跨いだ展示もあった。
なにかみんなある境を超え、メッセージ(声)を発している。
人は境(さかい)を意識し界(さかい)を超える生き物だ。
時に、絶対的境(さかい)あの世からも、声が届く。
10年前23歳で死んだムラギシの声も聞こえる。
彼が最後の個展で展示した白樺の幹。
それは円山川源流の不動の滝傍に倒木としてあった樹だ。
そして個展終了後その白樺は中の川源流へ埋葬したと聞いた。
円山川はある地点で界川と合流し琴似川となる。
琴似川支流のサクシコトニ川は植物園、伊藤邸、清華亭の泉
を源流とする。
そこに、ヌプサムメム(野傍ノ泉池)を原点とする作品をライフ
ワークとする高臣大介が見え、琴似川暗渠の路上の亀裂をモチー
フとした谷口顕一郎の姿も見える。
私には3人が遠く冥界を超え、川を通して界(さかい)を接し
交流しているような気がするのだ。
そしてムラギシが自ら埋葬した展示後の白樺の樹の一部は、
中の川源流から発寒川を通して石狩河口、茨戸(パラト)へと
声が届いているかに思える。
そういえば太田ヒロの自宅は、琴似川の源流のある山中である。
川を通して合流する天地の有機的な声の往来が聞こえる。
パラト(広い河口)は、入口・出口。
人の往来は途絶えても、見えない声の入口・出口の往来が
今も聞こえる気がする。
*高臣大介ガラス展「奏であう」ー2月14日(火)ー19日(日)
am11時ーpm7時。
*中嶋幸治展ー3月4日(土)・5日(日)「分母」冊子制作・販売。
*吉増剛造展「火ノ刺繍乃道(ルー)」ー4月予定。
テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向き
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