昨年末13年ぶりに里帰り、個展をした橘内光則さんが
ドイツ・ハンブルグで今月展示と聞く。
あの欧米日常風景に浮世絵の人物が舞う作品が彼の地で
どう評価されるのか、興味津々である。
彼の絵画の背景にあるワインやキャンドル、トーストに
目玉焼きが憧憬で獲得した日本近代の日常ではなく、本
当の長い継続の日常風景に置かれるのだ。
浮世絵の人物も今の日本にはいわば異国であり、日常化
している洋食風景も僅か百年にも満たない日常である。
当然ドイツでは日本での反響以上に浮世絵の人物に好奇心
と興味の中心が注がれる事だろう。
その時試されるのは、この絵を描いた橘内光則自身の内な
る日本であるに違いない。
西洋化近代百年の日本自身が、個として問われる。
日本に居ては曖昧に流されて強靱に意識しないものが、凝縮
して作品として問われるのだ。
その現実に橘内光則は耐えられるか。
今回のハンブルグ展は爪先立った分だけ本人自身への負荷
も大きく跳ね返って背負う事になるだろう。
しかし、そこから本当の出発地点と思う。
国際化とはホスト気分や異国情緒の緩やかなものだけではない。
相違という違和感の絶壁も在るのだ。
橘内光則はきっと難民のそれをどこかで感受する事だろう。
それが今、最も真摯な経験となる。
オリンピックや芸術祭のように、ホスト気分で浮き足立っては
駄目だ。
内・外の違いを受け止め、本当に深く自分が始まる。
*高臣大介ガラス展「奏であう」ー2月14日(火)ー19日(日)
am11時ーpm7時。
*中嶋幸治作品展ー2月末術~
*吉増剛造展「火ノ刺繍乃道(ルー)」ー4月予定。
テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向き
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