久し振りにT氏父娘が揃って訪れる。
T氏の愛嬢Yちゃんもすっかり大きくなった。
黒い上着に真っ赤なセーターがよく似合う。
小学校卒業アルバム文集に、「小さな美術館」と題し
テンポラリーで個展の夢を記してくれた多感な少女も
もう高校生である。
今年あるコンテストで最優秀賞を受賞し、某大手演劇
芸能所の研修に毎週一回東京に通っているという。
展示中の川俣展を見た後ふたりに吉増剛造さんの送られ
てきたばかりの新作映像を見せる。
新たなこの映像で吉増さんはさらに過激に自由になり、
描いたばかりの濡れた画面にモーツアルトの斬新な演奏
とともにハンマーを幾度も撃ち降ろし、呟く声が重なる。
”・・言葉は要らないな・・”
ハンマーの乾いた鋭い音を聞きながら、ふっと私は馬の
蹄の音を連想していた。
そして、今秋石狩の乗馬クラブに一週間合宿したYちゃん
の裸馬・乗馬生活を想い出し、聞いた。
なにか馬に乗ってる感じがするね・・。
首を縦に振り、Yちゃんは黙って頷いていた。
同日夕刻札幌で公開講座を終えた吉増さんが訪ねて来る。
Mさん差し入れの極上ワインの味見と来年展示の打ち合
わせである。
T氏父娘も見たネオ怪物君の映像草稿と新たな映像草稿
とそれを撮影したDVDが披露される。
さらに次回展示のタイトル案草稿も持参し披露した。
<火の刺繍乃RU=道>。
朱筆で揮毫された文字を見ながら、今年6月の東京竹橋の
個展会場最終コーナー、飴屋さん撮影の石狩河口燃える草
稿映像を想い出していた。
新たなネオ怪物君の映像の中でも吉増さん自身が草稿に火を
近づけ燃やすシーンが含まれている。
今秋東京の展覧会終了後ニューヨークで実際に草稿を燃やす
シーンも撮影したという。
その映像を見て現物の作品は、ジョナス・メカスさんが購入
してくれたと、吉増さんが嬉しそうに語った。
同日午後・夕刻、祖父・孫ほどの年齢差あるふたりが同じ
ように小さな美術館に集い、燃える種火を近づけてくれた
ような気がする。
一日<火の刺繍>のような日だったなあ。
*森本めぐみ展「百年の予定」ー12月30日ー1月3日
am11時ーpm5時:月曜定休。
テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向き
tel/fax011-737-5503