人気ブログランキング |

テンポラリー通信

kakiten.exblog.jp
ブログトップ
2016年 10月 07日

口中の海ー撓む指(37)

固い飴を噛んで、右上の奥歯が欠けた。
虫歯で被せていた歯なのでいつも行く歯医者さんに行く。
先生は網走の網元が生家で、アメリカでも資格を取った
腕の良い歯医者さんである。
円山に奥さん共々歯科医を開業している。

被せた歯は内部が虫歯となっていたようで、新たに差し歯
を作るといって歯形を取る。
その間水を口中に流し、歯を削る作業が続く。
私は口を開け目を閉じたまま口内を流れる水と歯を削る
ドリル音の中に居る。
そして何故か昨日収納した佐々木恒雄の絵を思い浮かべていた。
先生は船頭だなあ、と口中の水を感じながら思っていた。
満月と黒く浮かぶ一艘の小舟と人影、そして船尾の船外エンジン。
その前方に煌めく無数の波頭。
口中の水とドリルの音が、目を瞑っている所為かあの絵の
中にいるような感覚となっていた。
波頭は歯頭だ。
治療が終わり治療台から身を起こす。
そうだ、この目の前の壁に佐々木さんの絵が在ると良い。
先生も治療しながら目を送る事が出来る。
小さいけれど口中の海と故郷の海をそれぞれが感じる。
帰って佐々木さんの了解を貰い次第、この絵を歯医者さんに
見せたいと思っていた。

先生は腕の良い船乗りのようでしたよ、波頭は歯頭でした。
海を感じていました、と帰りに話す。
先生は、何の事かと笑っていた。

*橘内光則展「土曜の夜の夢」ー10月9日(日)ー30日(日)
 am11時ーpm7時:月曜定休。
*ホピ&カチーナドール展ー11月1日ー6日

 テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向き
 tel/fax011-737-5503

by kakiten | 2016-10-07 15:21 | Comments(0)


<< 日常の皺ー土曜日の夜の夢(1)      間(あいだ)の時ー撓む指(36) >>