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2016年 10月 01日

踵の海ー撓む指(35)

 ガソリンはタンク内部にさざなみをつくり僕らは海を知らない

佐々木恒雄が選んだ一首である。
この<さざなみ>に対応するように佐々木は夜の海の小波を描く。
空には満月が輝き、その下に一艘の船外機エンジンを付けた小舟
とひとりの男の影が浮かんでいる。
船首は微かに波を切り、その前には一面の小波が光っている。
画面は半分以上がこの美しい小波で覆われている。
小品だが、小波ひとつひとつに深い心が籠もっている。
佐々木の故郷の海だろうか。
美しい幻想的な絵である。
これは佐々木が故郷に帰り発見した深い心の海なのだと思う。
踵の旅が故郷の中心軸へと向かい、心根の繊毛が水を求めるように
触れたさざなみ、故郷の海だ。
私の友人が商船大を卒業し海運業に身を置き、巨大石油タンカーの
操縦士となりその中である失望を語ったように、佐々木自身も描い
ている船外機もまたガソリンのさざなみを抱いているのが現実で
ある。
小さなビルのような漁船が幾艘もあるのも現実だ。
描かれた小舟も現実には一艘ではなく、もっと群れて漁に集合す
るに違いない。
この絵は佐々木の夢の世界なのだ。
もっといえば、彼が故郷の海で発見したロマン・原点の象徴なのだ。
踵の移動が地軸を垂直に踏んで、根のように触れた故郷の海である。
それ故、彼の丹念に描く小波ひとつひとつの波頭が心の小波となって
訴えてくる。
故郷を出た時には見えなかった海である。

踵もまた旅をする。
深化という垂直な旅だ。
埋もれた故郷はその時姿を顕す。
そのようにして描かれた絵が今回出品の絵画と思う。

爪先と踵の交互の深化を私たちの足が生み出している。
その足は身体エネルギーが産み、ガソリンでも電気でもない。


*それぞれの山田航「水に沈む羊」展ー10月2日(日)まで。
 am11時ーpm7時。
 参加作家 森本めぐみ(美術)・野上裕之(彫刻)・佐々木恒雄(絵画)
 ・野崎翼(折り紙)・成清祐太(映像)・酒井博史(篆刻)・森美千代(書)
 ・竹本英樹(写真)・久野志乃(絵画)

 テンポラリースペース札幌北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向き
 tel/fax011-737-5503


 

by kakiten | 2016-10-01 15:27 | Comments(0)


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