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テンポラリー通信

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2016年 09月 04日

踵(かかと)の旅ー撓む指(18)

来月10日から約1ヵ月30日まで展示される橘内光則
さんのフライヤーが届いた。
DM横寸二つ折りの瀟洒なフライヤーである。
開くとトーストに目玉焼きソーセージイチゴに牛乳と
朝食と思われる二皿の食前・食中・食後3枚の絵画
が並んでいる。
そこにそれぞれ江戸時代の絵画から抽出したと思われる
小さな人物が描き込まれている。
細密でリアルな日常風景描写は13年前と変わらない。
しかしそこに江戸時代18世紀の曽我簫白の影響という
「日常の何気ない風景と、それに似つかわしくない平面
的なキャラクターを同じ画面に盛り込む手法」(2013
年ドイツMikikoSatoギャラリー図録から)を
使い描いているという。
2003年「it’s my life」展を開き、その後
京都へと旅立った橘内光則。
その頃は学生時代の友人達男女の群像を身近な日常目線で
超リアルに暖かく描いていた。
その日常目線は変わらないが、剽軽な曽我簫白の描く人物を
現代の日常風景に描き込む手法は不思議なユーモアを漂わせ
京都へ生活の場を得た、彼の踵(かかと)の視線を感じる。
江戸が東京となり、Tokyoとなる。
天皇が京都御所を出て江戸城に入り、皇居となる。
そうした近代の変遷を経ない京都という都市で、橘内光則が
そっと何気なく掴んだ文化の踵(かかと)。
それが曽我簫白の手法だったと思う。
トーストに目玉焼きにソーセージという朝食は、明らかに
戦後アメリカ文化に影響された日本第二の近代化の日常である。
トースター自体が戦後一般に普及した家電製品であるからだ。
1977年生まれの橘内にとっても極めて親しい日常の風景だ。
そこに戦後アメリカ的近代以前の明治鹿鳴館的欧米近代化、
大正モダーンを飛び越え、それ以前の絵師曽我簫白が顕れる。
トーストに象徴されアメリカ占領下の今に繋がる戦後近代を
日常として、鹿鳴館に象徴される明治の欧米化という近代を
飛び越し、江戸時代の絵師に惹かれる視線は札幌を出て京都へ
行った彼の踵(かかと)の旅の所為だと思える。
爪先の前方より、踵の重心軸先へ。
ある面で近代以前の無い札幌生まれの橘内光則が、トースト
文化を日常として育ち、鬼畜米英で閉じた明治以降の近代
を飛び越し、日本の根の旅を京都で経験してきた事に今我々は
気づき、感慨を保つのだ。
パリ、ロンドン、ローマに憧れ、さらには自由の女神の摩天楼
ニューヨークに憧れ始まった日本の近代化は、昭和の新たな
国粋主義により第二の鎖国「鬼畜米英」の敗戦を経て、米国
占領下の第二の近代が始まり、今が在る。
橘内光則のさり気ない踵(かかと)の旅は、札幌<北海道<日本
の踵を深く日常の場で穿つような仕事と思う。

真面目で剽軽で素直で頑固な彼らしい行き方で、今後の橘内の
展開が楽しみであり、興味が湧く。

*それぞれの山田航「水に沈む羊」展ー9月20日ー10月2日
 山田航第二歌集「水に沈む羊」から一首を選び、自分の作品で
 それを表現する展示。彫刻・絵画・写真等の作品展。
*橘内光則「土曜の夜の夢」展ー10月9日ー30日
*ホピ&カチーナドール展ー11月1日ー6日
 竹本英樹写真展、森本めぐみ個展11,12、1月予定。

 テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向き
 tel/fax011-737-5503

by kakiten | 2016-09-04 17:34 | Comments(0)


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