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テンポラリー通信

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2016年 08月 27日

足と踵ー撓む指(13)

二組の旅立ちを想い出しながら、一組のひとりの10月
個展に向けて百文字指定の跋文を書いた。
それを考えていて、浮かんだ事がある。
爪先と踵。
想えば二組の旅立ちには、それぞれ相方との方向の
差異があった。
南・北という発つ方向である。
ベルリンと京都、沖縄と網走。
しかしそれは南・北という差異だけではなく、身体の重心
爪先・踵の相違とも感じられる。
京都は東京とはまた違う日本の内なる中心のひとつだ。
網走は目指した人の故郷そのものである。
一方ベルリンは、未知の街であり、沖縄もまた未知の南島
であるだろう。
言える事は、爪先寄りの前方・未知選択と踵寄りの後方・中心
選択という事だ。
そして時を経た今、それぞれの旅は爪先から踵へ、踵は爪先
へと比重を移動している気がする。
爪先(未知)に重心の在った谷口顕一郎、チQ君は、故郷や
肉親が新たな未知として顕れているように思える。
踵に重心を置いた網走・佐々木恒雄君は、父と同じ漁師となり
新たな生活環境の中で働く漁師の姿・風景を新鮮な目で見詰め
絵画にしている。
京都へ旅立った橘内光則君は、身近な学生時代の友人たちの
群像画から、江戸時代の絵師の絵をリアルに作品中に挿入する
絵画を生み出している。
京都と故郷という離れて内なるコアへ旅立ったふたりは、そこで
爪先の方向性へと既知の踵土壌から未知の爪先土壌へと視座を
変位し、転位させているのだ。
さらにベルリンと沖縄を目指したふたりは、既知の踵土壌を爪先
の土壌として、チQ君は父・祖母の死を見詰め、谷口顕一郎君は
札幌の風土を見詰めている。

このふたつの重なる行為を通して、はじめて旅は足の旅、根の旅
となってきたと思う。
爪先が綿毛や花粉のように飛び、土壌に着地する。
そして踵の根となり、踵の旅、根の旅が始まるのだ。
爪先はやがて芽となり、幹となって森や草原の一翼を担うのだろう。
踵はやがて大きな根となり、森や草原の土壌に深く根付くだろう。
故郷(踵)と異境(爪先)。
その内なる外なる旅は、人生そのものとして今も続いている。

*それぞれの山田航「水に沈む羊」展ー9月20日ー10月2日
*橘内光則展ー10月8日ー30日
*ホピとカチーナドール展ー11月1日ー6日

 テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向き
 tel/fax011-737-5503

by kakiten | 2016-08-27 15:40 | Comments(0)


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