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テンポラリー通信

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2016年 08月 11日

ムラギシ10年ー撓む指(7)

通院で留守中酒井さんが留守番をしてくれた。
同時に木板に篆刻の「水」という文字を完成させたようだ。
これを天井に貼り付け、その真下の床に鏡板を配している。
鏡を覗きこむと水の篆刻文字が見える仕掛けである。
天地を結ぶ見えない線にムラギシ追悼の気持ちを感じる。
白樺の幹を吊り、白樺の足元の水の流れを幹に仕込んだ
川の音で表現した最後の個展。
そして1週間後遠く高知の鏡川で遭難死した22年の人生。
その川の記憶が鏡と水で彷彿とさせる。
会場にはこの時個展会場で自ら演奏・制作したCD「銭函
から星置まで」を流している。
そしてもう一つの名曲が、「撓む指は羽根」である。
これは、最終日のライブで有山さんたちが演奏してくれる。
2009年モエレ沼公園ガラスのピラミッドホール内で初演奏
されたジャズに編曲された演奏は名演だった。
それからこの曲は一人歩きし、多くのムラギシを知らない人たち
に演奏されている。
追悼の本に収納された未発表の曲、生前に遺されたムラギシの
演奏等を聞いて彼のことを記憶する人も多いのだ。
これからもどんどんムラギシは記憶の裾野遠くへと退いて
いくだろう。
しかし、心に残る記憶は遺された作品とともに、裾野から立ち
上げなければならない。
そうして今という足元の現在を構築していかなければならない。
セットされ与えられた与件としての現在ではなく、通り過ぎ
消えてゆく掛け替えのない日々の記憶の断片を、同時代として
現在に再編成する事。
その努力こそが、contemporaryという同時代の現在
なのだ。
生きて、体に刻まれ、心の一部となった記憶。
それを身体外の化工・加工エネルギーに吸い取れてはならない。
現代は与件の最新性を優先する社会である。
そして過ぎゆく物は捨て去る。
痩せた裾野、新幹線の鼻先のように、現在は薄く、細く、足元を
追い立てる。

「撓む指は羽根 ムラギシ10年」展は、そうした時代に対して
ささやかな、しかしそれぞれの手が、心が刻み創りだした裾野豊か
な現在である。

*「撓む指は羽根 ムラギシ10年」展ー8月14日まで。
 am11時ーpm7時。

 テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向き
 tel/fax011-737-5503

by kakiten | 2016-08-11 14:24 | Comments(0)


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