今年8月で村岸宏昭が四国高知の鏡川で死んで10年となる。
22年の短い生涯。
その遺された記憶は一冊の本となり、今も生前未知の読者を
増やしつつある。
そこで没後10年を経て、改めて既知・未知を問わずそれぞれ
のムラギシを問う展示を考えた。
切っ掛けはムラギシが遺した高校3年に描いた一枚の絵である。
死の1年後追悼展で親友のHが持参したこの絵は、そのまま私
の処で保管されていた。
偶然他の所蔵作品と一緒に倉庫から出し並べた時、あっという
驚きが生まれた。
偶々横に置いた80余歳で亡くなられた八木保次・伸子さんの
両作品に負けぬ存在感でその絵が私の目に飛び込んできたからだ。
それまで作家の記憶に属し存在していた絵が、全く絵そのものと
して存在感を保っていた。
八木保次・伸子さんの北の風土・自然を見据える色彩。
そしてムラギシの足元を見詰める不安で純粋な時代・社会への目。
このふたつの視線は、我々を取り巻く自然・風土そして時代・社会を
今も見詰める同時代の眼なのだ。
だからこの絵画は作者の年齢を超えて、並び響き合っている。
やはり10年という見えない歳月の力もあるのだろう。
生前一度も会った事のない人、そして10年を経て感じる今を
それぞれの立場で表現して欲しい、そう思い声を掛けた。
私は八木保次さんのフキノトウの緑を思わせる抽象絵画と伸子
さんの福寿草の黄を思わせる具象画を左右に配し、中央に村岸
作品を置いてみょうと思う。
今週末まで届く、他の人たちの作品も楽しみだ。
*「撓む指は羽根ームラギシ10年」展ー8月9日ー14日。
am11時ーpm7時:水・金ー午後3時閉廊。
テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向き
tel/fax011-737-5503