ふわっと両掌に余る程の薄茶色の網籠のような物が
入口前に落ちていた。
傍でよく見ると、五、六角状に内側が半透明な壁で
小さく仕切られている。
蜂の巣だ。
昨年蜂の巣が壁の厚い蔦の中に在るのは気付いていた。
あまり気にせずにいた。
そしてその内蔦の葉が枯れ、蜂もいなくなった。
その昨年の蜂の巣が枯れて、今年落ちてきたのだろう。
そっと手に取り、とりあえず赤いダイヤ型の菓子缶に入れ
入口右の大野一雄石狩河口公演ポスターとその記録集のコ
ーナーの下に置いた。吉増剛造一昨年オープニングの際
酔って頭突き、高臣大介ガラス「野傍の泉池」破損破片を
下に展示してある一隅だ。
ふわふわと綿のように軽く脆く、五・六角状に分離した
小部屋が密集している蜂の巣。
その繊細で半透明な壁が、ふっと東京・吉増展の薄い紗の
カーテンの仕切りを想い出させたのだ。
この場で10年。
自然が、夏緑の蔦のスーツと秋緋色のドレスを仕立ててくれた。
そこに巣ごもった蜂の家。
それも自然からのメッセージだろうと思う。
繊細で軽やかで機能的な織物・編み物のような小函。
小さな宇宙のようだ。
蔦のスーツがポケットから取り出して、今回の展示に贈り物を
してくれたのかも知れない。
*「石狩・吉増剛造 1994」ー7月31日まで。
am11時ーpm7時:月曜定休。
*ムラギシ没後10年展ーー8月9日ー14日。
14日・午後5時追悼ライブ。
「声ノマ 全身詩人、吉増剛造展」ー8月7日まで。
am10時ーpm5時;月曜定休。
東京国立近代美術館 東京都千代田区北の丸公園3-1
テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向き
tel/fax011-737-5503