2016年 07月 24日
いくら東京で優れていると思う展覧会があっても、ここは ここだから、その草の根展と自負してもそれほど人が来る 訳でもない。 疲れもあるのか、一日が誰も来ず夕暮れ。 不意に電話が鳴り、尾道の野上君からだった。 来月のムラギシ没後10年展で連絡したかったので話をする。 私の近況から東京吉増展の話にもなり、吉増展の各コーナー が作家の表現の道具により分かれ、かつ有機的に繋がっていた 事を説明した。 そしてその道具達が、もう一時代前の時代の裾野にある物達だっ たと話した。 尾道で船大工をしている野上君には、身に染みる話題だった らしく今のご時世では機械化が進み船大工も相当減ってきて いると話す。 それでもこの仕事は続け、かつ彫刻も創り続けたいと言う。 ムラギシ展にもなにかをと応えてくれ電話は終わった。 そこで少し元気が湧き、東京へ仕事で出掛けた写真家のY君に 電話する。 彼は行く前にわざわざ吉増展を見てくると電話くれていたからだ。 Y君はどうだったと聞くなり、声を上げ”良かった、すごかった” と言う。 なにか心が明るく開く。 明日また・・と電話が終わり、帰り支度をしていると、女性の 声がする。 市役所のキャリアウーマンYさんだった。 土日でやっと見に来れたと言う。 ふたつの電話で気合いの入った私は、一気に今回の展示の経緯 を語り出した。 閉廊時間を過ぎ、帰路同じ方向地下鉄なのでそのまま地下鉄の中 でも話は続いた。 夜寝床でもその高揚が脳に残っていたのか、ふっとパリの川俣正 と吉増剛造の対話のイメージが浮かぶ。 「声ノマ・・・」の声とは同時に会場全体を繋いでいた血液のよう な存在だった。 あれは、一種のインスタレーション。 川俣さんの家全体を囲み込んだ木材の回路と同じだ。 そう感じた。 木材が家の内部にも縦横に張り巡らされ、その中に居ると不思議 と和み落ち着くのだった。 その感覚を思い出していた。 あれは炭住という石炭労働者の住民が保っていた親密な心の回路。 その回路の存在を顕していた気がするのだ。 そして東京・吉増展の薄暗がりの全会場に流れていたカセットテープ の<声>もまた、ジャンルの分離を繋ぐ同じ存在ではないのか。 見えない声の回路を視覚化すれば、川俣さんのインスタレーション も声の木材になる。 ふたりの創造空間はコンテンポラリーな同質性を保っている。 そうすると、若い時面識のあるふたりを今あの会場で対話させたい と急に大きな期待が高まってきた。 明日パリの川俣さんに連絡してみようと思う。 時間がもうあまりない。 会期が来月8日までである。 NHKの日曜美術館とかTVの特集で企画しても良いよなあ、と 勝手に熱が上がる。 ふたりの優れた同時代人が、真にコンテンポラリーな時代の基調 低音(トニカ)を奏でたら最高である。 2009年目黒美術館企画「文化資源としての”炭鉱”展」でも ふたりは同時期展示していたのだ。 その企画者正木基氏も吉増展レセプションに来て、展示をもう一度 さらに見てくれている。 もっと早く気付くべきだったと川俣さんにメールした後思う。 *「石狩・吉増剛造 1994」展ー7月31日まで。 am11時ーpm7時:月曜定休(水・金都合により午後3時閉廊) *ムラギシ没後10年展ー8月8日ー14日:12日夕刻追悼ライブ :「声ノマ 全身詩人、吉増剛造展」ー8月7日まで。 am10時ーpm5時:月曜定休。 東京国立近代美術館 東京都千代田区北の丸公園3-1 テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向き tel/fax011-737-5503
by kakiten
| 2016-07-24 13:43
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Comments(2)
![]() ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
中村さん>29日金曜日は午後3時過ぎから通院です。
水・金は水難・金難の日です・・・。残念。
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