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テンポラリー通信

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2016年 05月 12日

肌寒い日ー鉄橋(28)

暖かいと思えば、また肌寒い日。
風が音立てている。
疲れがどこか澱んで体の底に沈んでいる。
健康時どうと言うことなくやり過ごせた事が、種々の制約で
迷う事が生まれる。
仕事・身体からくる制約。
その調整を考えているだけで、苛々が重なる。
東京行、洞爺行。
どちらも一泊予定だが、通院の振り替え段取りや動向
者との兼ね合いもあり、予定が落ち着かない。

そんな時ふっと石狩河口の大野一雄の舞踏が浮かんでくる。
沈む夕陽に向かって踊る真っ赤なドレスの大野一雄。
そして夕闇の迫る水面にアルヘンチーナの亡霊に扮した
白いドレスの大野一雄。
夕闇の青が次第に大野一雄の白いドレスを蒼に変えてゆく。
太陽は真っ赤なゼロとなり、地平線の雲の彼方へ沈む。
界(さかい)という世界が凝縮し、一瞬一瞬輝いた時間。
風が流れ、光が流れ、鳥が翔ぶ。
その宙で大野一雄が舞っている。
豊かなゼロのシーツ(舞台)。
海も陸も、光も闇も、生と死も、今も昔も、外も内も、その境界
がゼロに融け今だった。
中心に在るのは生命の光輪。

その日の潮の干満を調べ、満潮時に舞台が沈まぬよう、干潮
時に舞台が高過ぎないよう、水に入る大野一雄の為に舞台を
造った。
かって船着き場だった名残の棒杭が点々と残る来札の浜辺。
その棒杭に沿って舞台は造られた。
あの仮設舞台こそ手書きの罫線・草稿だったような気が今する。
吉増剛造が筆耕する吉本隆明の文字は、川に沈んだ棒杭。
その舞台の上で「怪物君」吉增剛造の絵筆が踊っている。

「石狩河口/坐ル ふたたび」を想い、感じていた事である。

*「石狩・吉增剛造」展ー6月5日まで。
 am11時ーpm7時:月曜定休。水・金午後3時で休廊。

 テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向き
 テl・ファx011-737-5503

by kakiten | 2016-05-12 14:39 | Comments(0)


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