暖かいと思えば、また肌寒い日。
風が音立てている。
疲れがどこか澱んで体の底に沈んでいる。
健康時どうと言うことなくやり過ごせた事が、種々の制約で
迷う事が生まれる。
仕事・身体からくる制約。
その調整を考えているだけで、苛々が重なる。
東京行、洞爺行。
どちらも一泊予定だが、通院の振り替え段取りや動向
者との兼ね合いもあり、予定が落ち着かない。
そんな時ふっと石狩河口の大野一雄の舞踏が浮かんでくる。
沈む夕陽に向かって踊る真っ赤なドレスの大野一雄。
そして夕闇の迫る水面にアルヘンチーナの亡霊に扮した
白いドレスの大野一雄。
夕闇の青が次第に大野一雄の白いドレスを蒼に変えてゆく。
太陽は真っ赤なゼロとなり、地平線の雲の彼方へ沈む。
界(さかい)という世界が凝縮し、一瞬一瞬輝いた時間。
風が流れ、光が流れ、鳥が翔ぶ。
その宙で大野一雄が舞っている。
豊かなゼロのシーツ(舞台)。
海も陸も、光も闇も、生と死も、今も昔も、外も内も、その境界
がゼロに融け今だった。
中心に在るのは生命の光輪。
その日の潮の干満を調べ、満潮時に舞台が沈まぬよう、干潮
時に舞台が高過ぎないよう、水に入る大野一雄の為に舞台を
造った。
かって船着き場だった名残の棒杭が点々と残る来札の浜辺。
その棒杭に沿って舞台は造られた。
あの仮設舞台こそ手書きの罫線・草稿だったような気が今する。
吉増剛造が筆耕する吉本隆明の文字は、川に沈んだ棒杭。
その舞台の上で「怪物君」吉增剛造の絵筆が踊っている。
「石狩河口/坐ル ふたたび」を想い、感じていた事である。
*「石狩・吉增剛造」展ー6月5日まで。
am11時ーpm7時:月曜定休。水・金午後3時で休廊。
テンポラリースペース札幌市北区北16条西5丁目1-8斜め通り西向き
テl・ファx011-737-5503